童話作家 安房直子さんが遺した景色

安房直子さんの作品を紹介しています。
童話作家 安房直子さんが遺した景色 TOP  >  お話「た行」 >  お月さまのいたずら『天窓のある家』

お月さまのいたずら『天窓のある家』


『天窓のある家』


☆あらすじ☆

何年か前、友人の別荘でのことです。

色々悲しいことが重なり、参ってしまったぼくに
友人がそこへ行くことを勧めてくれたのです。
「誰もいなくて静かだし、山小屋でしばらく静養してきたらいいよ」と。
そして、春の初め三日ほどを、そこでたった一人で過ごしたのでした。

その家には天窓がありました。
ぽっかりと真四角に切り取られた天井の穴にはガラスがはめこまれていて、
昼間は少し眩しいですが、夜には星や月が見えました。

庭にはこぶしの木があって小屋の屋根半分に覆いかぶさって枝を広げ、
真っ白な花がたくさん咲いていました。

三日目の満月の晩のこと。
月の光がことさら明るく、天窓の下に敷いた布団の上に、
こぶしの木の影がくっきりと落ちていました。

思わず手を伸ばして枝についた花の影に触ってみると、
銀色に光りはじめました。
ぼくはその銀の花を一輪摘んでみました。
すると本当に花の影がつまめたのです。

朝目を覚ますと、ぼくは昨夜の銀の花を握っていました。

そして一枚の花の影を自分のものにしたときから、
不思議な声が聞こえてくるようになりました。

”かえして かえして 影をかえして”と。


kobukobu



思いがけず何かを手に入れてしまったとき、
それがあんまり魅力的で心揺さぶられるものであったなら、
きっと、手放すのが惜しくなってしまうのでしょう。

たった一枚の花影から木の養分をもらったおかげで元気を取り戻した「ぼく」。

そして、それとは対照的な状況になったこぶしの木。

何年も経って、その後のこぶしの木のことを知って
「すまなかったな」と口にはした「ぼく」の心情を思い、
なんだか私は淋しさや諦めのような感情が湧いてきました。

本当の気持ちはどうなんだろうか。
もしかしたら、相手が人間ではなければ、後悔や謝罪の気持ちは
薄れるものなのかな。

それが、自分を含めての「人間」なのかなと考えさせられた物語でした。

tete






関連記事
[ 2019/05/03 00:00 ] お話「た行」 | TB(-) | CM(0)
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

すきっぷ

Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。

*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに

最新コメント
タグ