童話作家 安房直子さんが遺した景色

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一緒にロシア紅茶を飲めるなら『あるジャム屋の話』

あるジャム屋の話

☆あらすじ☆

若いころから人づきあいの下手な私は、大学を卒業して就職した会社を辞め故郷に帰り、しばらくごろごろしていた時のことです。
実家の庭にある鈴なりのあんずでジャムを作ることを思い付いたのです。

くる日もくる日もあんずのジャムを作り続け、周りの反応に気を良くした私はますます熱心にジャム作りに励みました。

森の中に小屋を建てて、何度も失敗を重ねた末に、なんとか売り物になるジャムが作れるようになったのが翌々年でした。

食料品店に持っていけばすぐに買ってもらえると思っていたのですが、どこに行っても私のジャムは相手にされませんでした。

ある夜のこと。
小屋に戻ると誰もいないはずの室内から灯りがこぼれていました。
恐る恐る覗いてみると、そこには綺麗な牝鹿がいたのです。
テーブルには私の皿とティーカップ。
皿の上のパンには私の作ったいちごジャムがたっぷりと乗せられ、ティーカップにはジャムを落とした紅茶。

私はすっかり嬉しくなりました。
私のジャムを紅茶に入れて飲んでくれるひとがいるなんて。

「素晴らしいです。色も香りも最高です」と言ってくれた鹿の娘に、それでもジャムは全く売れないと言うと真剣な目をしてキッパリとこう言ったのです。

「それはあなた、きっと、売り方が悪いのです」


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商売下手でも美味しいジャムを作る「私」。
そして、良き理解者であり、良き協力者である娘鹿と一緒に作り上げたジャムはどんどん売れていきます。

そして、忙しい中にも一仕事終えてふたりで飲むロシア紅茶。

「いつまでも一緒にいられたら、それでいいんです」

偽らざる娘鹿の素直な気持ち。

ふたりの気持ちが通じあっていても、この姿のままでは…ということを、親鹿は分かっていたのでしょう。
そばにいる大切な存在が、周りから「普通で一般的」ではない「異質な」相手だと見られたら、この社会では生きづらく、もしかしたら排除されてしまうかもしれない。

ただ相手を思いあって一緒にいたいだけなのに、そんな切ない思いが込み上げてきました。


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物語は美味しそうなジャムや季節の果実が出てきたり、私にはふたりの会話まで聞こえてくるような気さえして、好きなお話です。

安房直子さんの数ある作品の中で、この表題で書籍にならないかなと思う作品がいくつかあるのですが、この『あるジャム屋の話』もその一つです。
挿し絵はどんな感じが良いかなとか考えだすと想像が止まらなくなるほどです。







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[ 2020/12/13 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(0)
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