童話作家 安房直子さんが遺した景色

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真面目で正直者の青年に込めた思い(見習いコック:島田しまお)


世渡りの下手な青年

『海の館のひらめ』の主人公、島田しまおは真面目で働き者の青年ですが、
貧しく学歴もなく、人に取り入るのが下手な不器用な人間です。
料理を作ったり、食べたりするのが大好きで一人前の料理人になりたいと
人の嫌がる仕事も喜んでしていました。
しかし、料理学校も出ていなく、上司や先輩のご機嫌取りも出来ないしまおは
いつしか同僚や後輩にまで先を越され、ずっと下働きのまま。
馬鹿にされたり怒鳴られたり、悪口を言われる日々を送っていたのです。

作者である安房直子さんはこの青年にどのような思いを込めていたのでしょうか。

のちに安房さんはこのようにお話をされています。

「”正直でまじめな人間が、損ばかりしているのが
私は我慢ができませんでねえ”
この魚の言葉は、そのままこの作品を書いた頃の
私の思いでした。」


物語のしまおは、ひらめの助けを借りて成長していきます。
自分のお店を手に入れ、料理の腕を磨き、可愛いお嫁さんまで。
でもそれを達成できたのは、真面目にひらめの言いつけを守り、
料理の腕が上達しても得意になってひけらかしたりせずに、
それまでと同じように下働きを続けた誠実さにあったように思います。

こういう青年であって欲しいというのも安房さんの願いだったのかもしれません。



『海の館のひらめ』に込めた思い

それまで作品の中に自分の人生観や重いテーマを込めたことはあまりなかったとの
前置きをした上で、この作品を書くに至ったのは我が子を集団の中に入れた時、
一見美しい子供の世界に「正直者が馬鹿を見る」という現実を
目の当たりにしたからだったとのことでした。
傷ついて帰ってくる我が子に「もっとしたたかに、やられたらやり返しなさい」とは
どうしても言えなかったという安房さん。

「誠実に、一生懸命生きている人の上には、
必ず幸福の星がついているんだよということを
伝えたくてこの作品を書きました。」



星.PNG



子供の世界だけでなく、大人の社会でも真面目に正直にやっていても
報われないことはたくさんあります。
もっとずる賢くしたたかに、やられたらやり返せば
自分が得をするんだろうかと考える時があります。
でも、そんなことで人を欺いて、人を蹴落としてまで
得を手にすることがいいことなのか、そう思ってしまう自分がいます。

「どんなに損をしても、真面目で正直なのが一番だと、
今、辛い思いをしても神様がちゃんとみているよと
教えたかった。」


この言葉に救われた思いがしました。



※安房直子コレクション2『見知らぬ町 ふしぎな村』より引用させて頂きました。
 







プロフィール

青と緑璃

Author:青と緑璃
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」改め「青と緑璃」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに



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