童話作家 安房直子さんが遺した景色

安房直子さんの作品を紹介しています。
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青い夢の海に溺れてしまった娘『夢の果て』


『夢の果て』


☆あらすじ☆

あるところに、とても美しい目をした娘がいました。

「あんたは、いい目をしてるねえ。」
大人は必ずそう言いました。

自分の目は誰が見ても美しいのだとはっきり知るようになった娘は、
高慢になっていきました。
そして、他の人が頑張って手に入れる幸せも、私がにっこり笑えば
簡単に転がり込んでくると考えるようになっていきました。

ある日のこと、娘は電車の中でこれまで見たことないほどの
素敵な目の人に出会いました。

向かい合った娘は、ながいこと女の人の青いまぶたに見とれていました。

すると、その女の人はにっこり笑って優しく言ったのです。
「お嬢さん、いかがでしょう。ドリーム化粧品のアイシャドウ。
今買ってもう少し大人になってからお使いになるといいわ。」

アイシャドウを買って家に帰った娘は大人になるまで待つことが出来ず、
夜、こっそりとまぶたの上にアイシャドウをぼかしてみました。
それからは来る日も来る日もアイシャドウをまぶたに塗っては、
これから掴むさまざまな幸運を空想して、胸を踊らせました。

やがて、アイシャドウを付けたまま眠ると必ず同じ夢を見ることに気付きました。
それは一面の青い花畑を裸足で走っていく夢でした。
青い花はどうやらアイリスの花らしいのです。

aiai 



娘は周りから綺麗な目だと褒められていくうちに、
自分の目に自惚れていきました。

この目があれば幸せなど簡単に手にすることが出来ると。

これほど自分の容姿に自信を持てるなんて羨ましいですが、
いつも自分の目だけにとらわれて生きるのもなんだか淋しく感じます。

何も無いと思って自己否定してばかりよりは良いのかもしれませんが。

それにしても、アイシャドウの色をアイリスになぞらえたのは
本当に素敵な表現です。
神秘的な深い青は、上品に咲くアイリスにピッタリだと思います。


shasha 







[ 2019/05/05 00:00 ] お話「や行」 | TB(-) | CM(0)

夕陽が沈んだあとの空の色『夕空色のかばん』


『ゆめみるトランク』~北の町のかばん屋さんの話~より
『夕空色のかばん』


☆あらすじ☆

北の町、ここはまだ雪が舞う冬だというのに、
町外れにある小さなかばん屋のショーウインドーだけは春なのです。

南の港町にかばんを売りに行ったときに買ってきた水仙が
窓いっぱいに飾られ、優しい春の歌を歌っていました。

ある日、まるで水仙の花のようなお客さんがかばん屋に来ました。
そして、「かばんをこしらえてください」と言うのです。

かばん屋は注文を受けてかばんを作るのは始めてでした。

初めから持ち主が決まっていて、それを持つ人の手がありありと見えるかばん。

心をこめて作ったかばんは素晴らしい出来上がりでした。
軽くて使いやすくて、とても優しい感じの夕空色のかばんです。



yuuu




太陽が沈んだあと、まだほんのりと太陽の光が残った空の色が好きです。
太陽の赤と、夜の闇が混ざり始めて、なんとも言えない柔らかい色に包まれる空。
会社帰り、車のハンドルを握っているというのに、うっかり見惚れる情景です。

そんな色の革で作ったかばんなんて、きっと素敵でしょうね。
自分の好きな革で好きなように作る、オーダーメイドのかばん。
いつかはそんな贅沢な自分だけのかばんを作ってみたいものです。



[ 2019/04/29 00:00 ] お話「や行」 | TB(-) | CM(0)

子猫を捨ててきなさいと、さっきお母さんが言ったのです。『やさしいたんぽぽ』


『やさしいたんぽぽ』


☆あらすじ☆

誰もいない日が暮れた春の野原に、女の子が立っていました。
女の子はエプロンの中に白い子猫を隠していました。

子猫は静かに眠っています。
さっき、お母さんがこの子猫を捨ててきなさいと言ったのです。
「眠っているうちに、さあ、早く早く」と。

捨てられた子猫は、そのあとどうなるでしょう。
真っ暗闇の中、目を覚ました子猫が鳴いても誰もいなくて…。
考えただけでも恐ろしいことです。

女の子は泣きながらつぶやきました。
「助けて、助けて、誰か助けて…」

すると、女の子の足元がピカッと光ったのです。
まるで黄色い豆電球が灯ったように。
そして、黄色い灯りはあっちにもこっちにも広がっていきました。

それは、特別な夜だけに光るたんぽぽだったのです。


tanpopo.jpg




きっとこの猫は元々捨て猫だったのでしょう。
たぶん、生まれて間もない小さな命。
それを見つけた女の子は可哀想になって家に連れ帰ったのでしょう。

もし、この子の家で猫か犬、動物を飼っていたなら迎え入れられることも
容易だったかもしれません。
でも、動物を飼っていなければ、いきなり連れてこられても、
飼うことを躊躇してしまうお母さんの気持ちも分かる気がします。
きっとお母さんも女の子を悲しませたいわけでは無かったはず。

優しいたんぽぽたちに出会ったおかげで子猫は安らげる場所へ
旅立つことができました。

ホッとした気持ちと、本当にこんな場所があったら良いのにと、
思わずにはいられなくなった物語でした。


shiro






[ 2019/04/28 00:00 ] お話「や行」 | TB(-) | CM(0)

ゆきひら鍋がこしらえてくれた優しくて懐かしい味『ゆきひらの話』


『ゆきひらの話』


☆あらすじ☆

小さくて古い一軒家におばあさんが一人で住んでいました。
おばあさんは長いこと熱がひかず、頭も痛くて寝込んでいました。
「こんなときに、だれかがいてくれたら…」
すると、台所の方でコトコト音がしました。
誰かきたのかしら?

「ぼく、ゆきひらです。」

そう言っておばあさんの目の前に現れたのは、
おばあさんが子供だった頃、お母さんがいろんな料理を作るのに
好んで使っていたゆきひら鍋でした。
戸棚の奥に仕舞い忘れられていた懐かしいお鍋だったのです。

お粥や熱いスープよりも冷たいものが食べたいと言うおばあさんに
「りんごの甘煮をつくりましょう。冷たくしてご馳走しましょう」
と言ってくれるのです。


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一人で病に耐えていたおばあさんに、今は亡きお母さんがくれた
優しくて素敵な魔法のように思える物語でした。

私が子供の頃は毎年のように風邪をひいて寝込んでいました。
その度に母がつきっきりで看病をしてくれて、
家族がアイスやプリンを買ってきてくれたりしました。

病気になるとなんだか言い知れない不安が襲ってきて
いつも以上に甘えたり優しくされたくなります。
そして、家族は言わなくても優しくしてくれるんですよね。
子供の頃は、知らず知らずのうちに守られていたんだなって
今更ながらに有り難く思い出します。




[ 2015/03/07 00:00 ] お話「や行」 | TB(-) | CM(0)

カラスとのティータイム?『山のタンタラばあさん』


『山のタンタラばあさん』


☆あらすじ☆

タンタラばあさんはタラの木の下に住んでいる魔法使い。

タンタラばあさんがおまじないをすると
よもぎで作ったスカートがまあるくふくらんで
タンタラばあさんはふわりと風に乗り、空を飛んでいきます。

すると、よもぎの香りにつられていつの間にかカラスがやってきました。

そして、なにやら「お茶にしよう」なんて話しているではありませんか。

きゅうにタンタラばあさんも喉が渇いてきました。

おまけにお腹もすいてきたので、
カラスのあとを追いかけてみることにしました。


タラノキ.jpg
 


紅茶の時間、優しい時間

今日は建国記念日で仕事がお休みだったので
部屋でゆったりと過ごしました。

先日の雪がまだ家の前の道路や駐車場には残っていて
風も冷たくてこんな日はやっぱり家にこもるに限ります。

そして今日は頂き物の紅茶で楽しいティータイムを過ごしました。

なんだか今までいろんなことに余裕がなくて、
ゆっくりお茶の時間を楽しむことに久しく遠ざかっていたのですが、
先月お世話になっている方から紅茶を頂き、
最近の休日はいい香りに癒されています。

紅茶のなんというかあの控えめな香りと味わいが好きなんですよね。

あまり自己主張しない控えめな風味が落ち着くんです。

そういえば、安房さんも紅茶がお好きでいらしたようです。

今日は冷たい風が吹く寒い日でしたが、
温かいものを頂いて体も心も暖まり幸せな休日になりましたo(^▽^)o

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[ 2014/02/11 00:00 ] お話「や行」 | TB(-) | CM(0)

亡き娘を想うおやじさんのおでん屋台『雪窓』


『雪窓』


☆あらすじ☆

山のふもとに、おでんの屋台がでました。

お店の名前は『雪窓』。

愛想のいいおやじさんと助手のたぬきで切り盛りしている屋台です。

ある晩のこと、若い娘のお客がきました。

十年も前に死んでしまった娘の美代にどことなく似ています。

生きていればこのくらいの年格好でしょう。

そして、娘が越えてきたという峠の向こうは、
美代に関わりがある場所だったのです。

おやじさんは娘の忘れ物を届けようと
たぬきと一緒に屋台を引いて峠を越えることにしました。


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親の愛は、見返りを求めない無償の愛なのでしょうね。

そして、子供はその想いを当たり前と思わずに、
産み育ててくれた感謝を忘れてはいけないのだと思わされました。

父と娘が互いに思いやる気持ちが、優しく表されている作品だと思います。



父の誕生月

2月になりました。

今日は一日雪が降り続いています。

まだまだ止む気配はなく、横なぐりの大粒の雪が降っています。

雪.jpg

部屋の中から見る雪は綺麗なんですけれどね…。

立春とは名ばかりの2月は本当に苦手。

今日は外出の予定をキャンセルして部屋で過ごしました。

これから雪が止んだあとも路面の凍結には注意しないと
いけないですね。

月曜日まで雪の影響がありそうで憂鬱…。

みなさんも外出時には足元にお気をつけ下さいね。


そんな苦手な2月は他界した父の誕生月でもあります。

もう誕生日は過ぎましたがその日は懐かしく穏やかな気持ちで
父のことを思い出しました。

正直、父親も苦手だったな~(笑)

こんなふうに父の誕生日に父の事を思い出すのは、
父が他界してからです。

職人気質で気性が荒くて、いつも怒ってばかりの父を理解できず、
お酒を飲むと荒い気性は余計に酷くなるので、
ますます嫌いになっていきました。

亡くなる前、一年ほど脳梗塞で倒れて入院生活をしていた時、
はっきりしない意識の中で時折言っていたのは、
「何にも残してやれなくて悪かったな」と言う言葉でした。

そう言う時の父はいつも泣きそうな声と顔になりました。

父は家族を思いながら生きていたのだと気づいた時、
育ててもらっていることに感謝することなく生きて、
父を拒絶し、優しく出来なかったことを後悔しました。

きっと、私が表面的なことにしか目がいかなくて、
父のことを分かろうとしなかったのかもしれません。

家族とのコミュニケーションは下手だったけれど、
一所懸命に仕事をして家族を養ってくれていたこと、
不器用な父には家族のために頑張って働くことが
唯一の愛情表現だったのかなと今更にして思います。

幼い頃をよくよく思い返してみれば、
父の膝の上は私の特等席でしたし、
父に耳かきをしてもらいながら寝てしまうのは至福の時だったなと
懐かしく思い出しました。



[ 2014/02/08 00:00 ] お話「や行」 | TB(-) | CM(0)
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すきっぷ

Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


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