童話作家 安房直子さんが遺した景色

安房直子さんの作品を紹介しています。
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井戸の中に、とっても綺麗なものがあるよ『もぐらのほった深い井戸』


『もぐらのほった深い井戸』


☆あらすじ☆

じゃがいも畑の隅っこにモグ吉という子供のもぐらが住んでいました。

ある秋の夜、畑の小道で平べったくて、丸くて、ピカッと光るものを見つけました。
それがお金だと気づいたモグ吉は、なにか閃いたように地主の家に向かいました。

そして、じゃがいも畑の隣の、ちょうど広げた風呂敷くらいの土地を買ったのです。

「ああ、ここはぼくの土地なんだ。この土の下どこまで行っても僕のものなんだ。
それから上は、お星さまにとどくまで!」

モグ吉はこの小さな土地に、井戸を掘ることにしました。


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偶然に拾ったお金。
賢いモグ吉は、それで土地を買い、井戸を掘ろうと思い立ちます。
はじめは、仲間たちに綺麗で美味しい水を飲ませてあげようという思いでした。
そして、とても辛抱強いモグ吉は何年もかかって井戸を作りあげたのです。

大人になったモグ吉は、前よりももっと利口で、辛抱強くて、
大変欲張りになっていました。

頑張って作り上げた井戸。
そこから湧き出る水に対価を求めることは責められることではないと思います。

「この苦労はいったい誰のためだったんだろう。」

何年もかかって苦労して、ずっと一人で井戸を掘り続けていたモグ吉に
そういう疑問が湧き上がってくるのも不思議ではないことだと思うのです。

ただ、悲しいと思ったのは、井戸の中の綺麗なものを教えてくれた子ねずみに
もっと早くに出会って欲しかったなという思いです。

純粋な気持ちで希望を持ち頑張ることと、損得勘定。
誤解を恐れずにいえば、どちらか片方だけで生きていくことは出来ないと思います。

上手くバランスをとれる人もいれば、どちらかだけに偏って立ち行かなくなることも
あるでしょう。

そんなとき、大切なことに気づかせてくれる存在がそばにいたら…と思うのです。


物語の最後、自分の思いちがいに気づきながら空にのぼっていくモグ吉に、
ほんの少し、「良かった…」という思いがこみ上げてきました。





[ 2019/10/27 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)

さっきは赤かぶをありがとうございました。『みどりのはしご』


『みどりのはしご』


☆あらすじ☆

小さな小さな庭の真ん中に、大きな大きなモチノキがある家に、
そのおばあさんは住んでいました。

近所の人は木を見ては、切っておしまいなさいと言うのですが、
おばあさんにはそんな可愛そうなことはできませんでした。
おばあさんはその木がとても好きなのです。

冬が終わると、おばあさんは木の下に小さな畑を作りました。
そして、赤かぶの種を十粒蒔きました。

すくすく育った赤かぶはやがて食べごろになりました。

そんなある朝、おばあさんがかぶの数を数えてビックリ!
たしかに十本あったはずなのに、九本しかありません。

「あれまあ、いったい誰が一本取ったんだろう。」

しばらくすると電話がかかってきて、その相手はこんなことを言いました。

「もしもし、おばあさん、さっきは赤かぶをありがとうございました。
これからサラダを作りますから、どうぞ食べに来てください。
モチノキのはしごをずうっと登ってきてください。」



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大切に育ててきたおかげで、すくすく育った赤かぶ。

食べごろになってサラダにしようと楽しみにしていたのに、
断りもなしに採っていくなんて。

もし私だったら
「差し上げたつもりはありませんけど?!
ありがとうの前にごめんなさいでしょ?」
なんて、チクリと嫌味の一つでも言いたくなると思います。
しかも、木に掛けられたハシゴを登ってきてくださいですって?!

外に出て木を見ると、確かに細いハシゴが掛かっています。
そして、おばあさんはハシゴをどんどん登って行くのです。

ただののんびり屋でお人好しな人だと思っていたけど、
結構大胆で好奇心旺盛でポジティブなのでした。

きっと、赤かぶを取られたことなどもうすっかり気にしてないのでしょうね。

挿絵も綺麗で、柔らかい色使いが青葉の爽やかな季節に合っていて、
清々しい緑とおばあさんの表情に優しい気持ちになりました。


akkk





「令和」の時代が始まりました。
今朝は昨日の雨が上がって、天気も良く清々しい一日の始まりでした。
これからどんな時代になるのか、どうぞ宜しくお願いいたします。


greee







[ 2019/05/01 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)

味の小人がくれた魔法と大切な約束『魔法をかけられた舌』


『魔法をかけられた舌』

☆あらすじ☆

突然の不幸で父さんのレストランを受け継いだ洋吉。
怠け者だった洋吉は評判だった父の味の秘密を知ることなく
ひとりぼっちになってしまいました。

「何もかもおしまいだ」そう思った時、
コックの身なりをした小人が立っていました。

それは食料品の倉庫になっている、地下室の番人をしている小人でした。

店を売ってしまおうかという洋吉に、たった一つ大切な約束を守ってくれるならと、
とびきりの魔法をかけてくれたのです。

小人がくれた魔法、それは失意の中にいた洋吉にとって希望の光でした。
これからは真面目に一所懸命に料理の勉強をして、
父さんが遺してくれたレストランを守っていくと誓ったはずでした。

しかし、魔法のおかげでいとも簡単に欲しいモノを手に入れてしまうと
父さんが遺してくれた味も、小人との大切な約束もすっかり忘れてしまったのです。

shop1.jpg



洋吉は、努力をしなくても思い通りにいってしまったために、
大切な小人との約束を忘れてしまいました。

もしかすると小人はこうなることが分かっていたのかもしれません。

三十年も食料品の倉庫になっている地下室の番人をやっていて、
そのご褒美にごちそうにもありついていたというのですから、
あまりに違いすぎる父親と息子のことも分かっていたのでしょう。

それでも、この店の味が消えてしまうのは惜しいと、
洋吉に望みを託したのだと思います。

欲しいものが簡単に手に入ったとき、人は自分の実力を錯覚して
傲慢になっていきます。

大切な約束も忠告も、都合の良いように無かったことになっていきます。

でもそんなごまかしは、いつかは消えていくでしょう。

いつか、心の底から手に入れたいものが出来て、
それが手に入らなかったときに今までの過ちに気づくのだと思います。

そして洋吉も、自分の過ちに気づいたとき、辛抱強く待っていてくれた小人に
謝罪と感謝の言葉を口にします。

小人は洋吉を責めるようなことを言いませんでした。

「ずいぶん待ちましたよ」
その言葉だけで小人の気持ちが痛いほど伝わってきました。

父親と小人が残してくれた大きな愛に気づいて、
洋吉は変わっていくでしょう。

地下室から調理場へと階段を上っていく姿に清々しい思いがしました。




[ 2019/03/13 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)

桜林の番兵みみずくと桜の精のお話『緑のスキップ』


『緑のスキップ』

☆あらすじ☆

みみずくは桜林の番兵です。
桜林に怪しいものが入らないよう見張りをしています。

ある時、満開の桜の下にいた桜色の着物を着た女の子と出会いました。
「あたし、花かげちゃん」
それは桜が散ったら消えてしまう桜の精でした。

それから、みみずくは花かげちゃんの番兵になりました。
周りが夏や秋になってもここだけは桜の季節が終わらないように。
何かが花かげちゃんをさらって行ってしまわないように。
かわいい花かげちゃんを守ろうと決めたのです。

四月のある晩。
何かに追われている傘をさした小人を逃がしてやると、
なんだか暖かい風がふいてきて眠くなってしまいました。
すると、足音のような不思議な音が近づいてきます。

トット トット トット トット

それは春の緑を夏の緑に変えてしまう緑のスキップでした。



sakura1.jpg



桜の花は咲いたなと思うとあっという間に散り始めてしまいます。
綺麗な花で楽しませてくれるのも束の間。
潔い散り際の美しさも惹かれるところなのかもしれません。

実は、桜の花の良さを感じられるようになったのは大人になってからです。
改まってお花見に行きたいとは思わないのですが、
外に出れば必ずどこかにはある桜の木を日々見ていると、
知らず知らずのうちに花が咲くのを待っていたり、
咲いた花に目を奪われ、心が癒されていくのを感じたりします。
そして散り始めれば…淋しいのです。

私は子供の頃から花よりも緑が好きで、以前は桜も満開の時よりも葉桜になった頃のほうが好きでした。
薄ピンク色の花びらに混じって薄い緑色がいいアクセントになっていくと、
爽やかな新緑の季節になったんだなと嬉しくなりました。
穏やかな気候と爽やかな風が吹くこれからの季節が一番好きなので。

今は、満開の桜も葉桜も、やっぱり好きです。
潔く過ぎて行ってしまうように見えても、
まだもう少し余韻を残して、葉桜も新緑の季節も楽しめそうです。




[ 2016/04/10 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)
プロフィール

すきっぷ

Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


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