童話作家 安房直子さんが遺した景色

安房直子さんの作品を紹介しています。
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祖父が愛したカーネーション『カーネーションの声』


『カーネーションの声』


☆あらすじ☆

亡くなった祖父が残してしていった、庭の一画にある十坪ほどの温室。

その中にはさまざまな花や観葉植物の鉢植えがぎっしりと育っていましたが、
祖父が亡くなってからは植物の世話をする人が誰もいなく、しおれていきました。

そして、誰が言い出したか温室を取り壊してアパートを建てることになりました。

温室にあった鉢植えや球根は欲しいものは貰ったり、隣近所に分けました。
しかし、丈ばかり高くて花がとても小さい貧弱なカーネーションは
誰の手に渡ることもなく根こそぎにされて庭の隅に捨てられました。

そして、その跡地には南向きの独身用の小さな8部屋のアパートが建ちました。

アパートに入ったのは全員男性でした。

ある日のこと、部屋代を払いに来た人が昼間部屋にいると不思議な声がすると
言うのです。


kkkkkkk




おじいさんが丹精込めて育てた花たち。
中でも痩せっぽちで貧弱なカーネーションへの思い入れは深かったのでしょう。

カーネーションは母の日に贈る花として有名で花言葉も「母への愛」だそうですが、
西洋の花言葉には、「あなたに会いたくてたまらない」というのもあるようです。
なんだかこの花言葉、おじいさんとカーネーションたちの想いのようにも思えて
勝手に意味を重ね合わせてしまいました。

おじいさんが愛情込めて育て、その思いに応えて小さいながらも懸命に咲いていた
花の末路。

淋しさや切なさがこみ上げる、健気に咲いた花の物語です。






[ 2019/05/26 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

こふきちゃんと母ちゃんとコロッケと『コロッケが五十二』


『コロッケが五十二』


☆あらすじ☆

町の肉屋でもう何十年も使われている大きな大きなおなべがあります。
ぶ厚くて、黒くて重くて、叩くといい音のするおなべです。
毎日、長いかねのお箸と一緒に美味しいおかずをこしらえています。

しかも、このおなべで作ったコロッケはまるで生きているように
歌でも歌いながら今にもコロコロ転がりそうに見えるのです。


この肉屋に小さい女の子がいました。
ふっくりと色白で、まるで粉ふきいもみたいな子なので
みんなは「こふきちゃん」と呼んでいました。

幼い頃からお母さんを真似ては、売り物にならないコロッケを作っていたので、
だんだんと”コロッケぐらい一人作れる”と思うようになりました。

それをお母さんに言ってみましたがお店が忙しいお母さんは
こふきちゃんの相手などしてくれません。
腹を立てたこふきちゃんがまな板の上のコロッケを払い落とすと
おかみさんはとてもこわい顔をして叱りつけました。

びっくりしたこふきちゃんは顔をくしゃくしゃにして泣き出しました。
床に寝転んで、手足をバタつかせ泣き続けました。

けれど、そんなことをしても誰もかまってはくれませんでした。

korokoro 



ずっと小さい頃から店先で母ちゃんの真似事をしていたこふきちゃんは
いつしか、コロッケなんて自分一人でも出来るような気になってきました。
「母ちゃんのお手伝い、ちゃんと出来るよ」って言いたかったのかもしれません。

なのに、忙しい母ちゃんは話をまともに聞いてくれません。
だから、怒ってコロッケを払い落としてしまったのでしょう。

怖い顔で叱りつけた母ちゃんにビックリして泣いちゃって、
床に寝転んで鼻と涙でぐしょぐしょになっても誰も構ってはくれなくて…。

その情景とこふきちゃんの気持ちが分かりすぎるほどに分かって
笑ってしまいました。

こふきちゃんが騒いでも動じない母ちゃんと、頑固でめげないこふきちゃん。
きっと似た者同士なのかもしれません。


お話の終盤、母ちゃんが文字通り「体を張って」こふきちゃんを助けたあと、
家へ帰る二人の会話がとても良いな~って思いました。

母ちゃんの「なにいってるの」っていう言葉が優しく聞こえるようでした。




今日は母の日♥
kaachan 






[ 2019/05/12 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

きつねの親子とお客様『きつねのゆうしょくかい』


『きつねのゆうしょくかい』


☆あらすじ☆

「ねえ、お父ちゃん。今度うちへお客を連れてきてちょうだい。
夕食会をしたいの。」

ある朝、きつねの女の子はお父さんきつねにいそいそと話しかけました。

「せっかくのあれ、使わなくちゃ…」
きつねの女の子は、戸棚に並んだ六つのコーヒーカップを指さしました。
それは娘にせがまれて、お父さんきつねがやっと手に入れてきたものでした。

お父さんきつねはお客なんてバカげたことだと思いました。
第一、ごちそうが倍だけ減るのです。

「人間のお客を呼んでみたいと、ずっと前から思ってたの」

まるで、初めからそれだけ考えていたように、娘のきつねはきっぱりと言いました。



shosho



夕食会だなんて、どんな料理が出るのか興味がありましたが、
メニューを見ただけでも美味しそうな料理が並んでいました。
最後には焼きリンゴとお茶も出るとか。

お父さんと娘だけの暮らし。
女の子は友達が欲しかったのかもしれません。
お客さまを招いて楽しい時間を過ごしたかったのでしょう。
それも、人間のお客さまを。

はたして、お父さんは人間のお客さまを連れてくることが出来たのでしょうか。

お父さんの娘を思う気持ちと行動がなんだか笑ってしまいました。
お互いのいろんな勘違いも手伝って、なんとかテーブルに揃った六人。
ずっと前からの知り合いのように話が弾んで、楽しい時間を過ごせたようです。

このラスト、私は好きな流れです。
ビックリして、クスッて笑って、これで良かったのかもね~って思って。

父娘、お客さま、それぞれのやりとりが面白くて、楽しいお話でした。


koko



*今日は平成最後の日。色々あったけれど、ありがとうございました。






[ 2019/04/30 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

ひと粒のガラス玉を草のツルに通して『ころころだにのちびねずみ』


『ころころだにのちびねずみ』


☆あらすじ☆

ころころだにの谷底にひとりぼっちで住んでいる男の子のねずみがいました。
ちびねずみは恥ずかしがり屋で怖がり屋で、いつも自分の穴に引っ込んでいました。

だから、空は谷底から見える細長い空しか知らないし、
花は、谷に咲くユリの花しか知らないのです。

でも、ころころだには住心地の良いところです。
冷たい水も流れているし、緑の草もたくさんあるし、
ときどき上の方から季節の木の実などが落ちてきたりします。

「だから、僕ちっとも不自由してないんだ。
おともだちなんかいなくたって平気さ」

でも、本当は…。

ある晩のこと、ねずみは谷底に座って、細長い空を見ていました。
すると、たくさん光っていた星の一つが急にキラキラ光りだして、
くるくる回りだしたのです。
そして、キラキラ光るものが目の前にポトリと落ちました。

空の星が落っこちてくるなんて、そんなことあるのかしら…。


hhhhh




ひとりぼっちのちびねずみの前に突然現れたねずみの女の子。

女の子が落とした大切なものを一緒に探してあげるのですが、
ちびねずみのぎこちない優しさが、可愛らしくて、
読みながら嬉しくて笑顔になりました。

ggggg





[ 2019/04/07 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

ひとりぼっちのおばあさんと不思議なスカーフ『黄色いスカーフ』


『黄色いスカーフ』


☆あらすじ☆

春間近のある朝、外出時に大きなスカーフを持っていくと便利だという
新聞記事を読んだ、一人暮らしのおばあさん。

なるほど、私も試してみようかしらと、たんすの中から
目も覚めるような鮮やかな黄色い絹のスカーフを取り出してみました。

すると、心が明るくなってどこかへ出掛けたくなりました。

いそいそと、濃いオリーブ色の新しいワンピースに着替えて、家を出ました。

並木道を歩いていると風が吹いて髪が乱れたので、
さっそく黄色いスカーフで髪を包んでみました。

そして、通りがかりのクリーニング屋のガラスに写った自分を見て
たちまち真っ赤になってしまいました。

頭にカナリヤ百羽乗せてるみたいな派手な姿だと思ったのです。

大急ぎで黄色いスカーフをむしり取ると、クシャクシャに丸めて
バッグに放り込みました。

急ぎ足で歩きながら、おばあさんは恥ずかしくてたまりません。

すると、いきなりバッグからこんな声が聞こえてきました。

「ひろげて、ひろげて」
「こんなにクシャクシャにされたんじゃ、息もつけない」

それは、バッグに丸めて放り込んだ、黄色いスカーフの声でした。


kiki



ひとりぼっちで暮らしている主人公のおばあさん。
春が近づく陽気に誘われてどこかに出掛けてみたくなりました。

こんなときに、電話でもかけて気軽に話のできる娘でもいたら…
という思いが湧き上がってきましたが、まだ元気だし、住む家もあるし、
お金にも困っていないのだから、そんな贅沢は言わないことにしましょうと、
思いを打ち消していきます。

そして、「私は幸せ者です」と、自分に言い聞かせるように
一人で出掛けて行くのです。

不幸じゃないけれど、なんだか胸にある淋しさに気づく瞬間。

けれど、これまでの生活は自分で選んできたことも事実。
それを分かって、何不自由なく暮らせている自分は幸せだと…。

少し切なさや淋しさを感じてしまうお話なのですが、
初春の雰囲気や暖かい季節の楽しみも感じられる作品です。

黄色いスカーフ、黄色いオレンジ、黄バラ、
黄色いカナリヤ、黄色いブリン

桜のピンク色も可愛いけれど、黄色も春に似合いますね。





[ 2019/03/31 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

そんなら、僕と旅にでましょう。『かばんの中にかばんをいれて』


『ゆめみるトランク』~北の町のかばん屋さんの話~より
『かばんの中にかばんをいれて』


☆あらすじ☆

北の町の町外れにある小さなかばん屋さん。
三代目の主人、上原一郎さんは腕のいいかばん職人ですが、
商売は上手くなくてお客さんもあまり来ないようです。

一郎さんが店の中で仕事をしていると時々不思議な声がします。

「たいくつでたいくつで、やりきれない」
「かばんは、かばんらしい暮らしがしたいよ」

それはショーウインドーに飾られた古いトランクでした。

トランクは夢見るように言いました。
「わたしはいっぺん電車に乗ってみたいのです。
中にいろんなものを入れて、旅にでたいのです。」

急き立てられて一郎さんはトランクと旅に出ることにしました。

北の町はまだ、北風が雪の粉を撒き散らす寒い季節です。


banban



新しいかばんを買うときのワクワク感を思い出しました。
洋服のように頻繁に買い換えしないこともあって、
どのかばんが良いかとても時間をかけて選んでしまいます。

見た目はもちろん、どのくらい入るかとか、中にポケットは付いているかとか。
作りはしっかりしているかなんていうのも気になります。

あとは、値段ですね。
良いな~って思うのは、やっぱりそれ相当の良いお値段。

そして手に持ってみたり、肩にかけて鏡にうつしてみたりすると、
また印象が変わってきたりして…迷う~~~。

最近はあまり頻繁に買うこともなくなりましたが、
あれやこれやと見ている時間は楽しいひとときです。

そういえば、この物語に出てくる大きなトランク。
子供の頃、外国のドラマか映画を観ていたときに、
旅をしていた女の子が持っていたのがこんな感じのトランクで、
なんかレトロな雰囲気があって素敵だなって思った記憶がありました。

いつかわたしもこんなトランクで外国を旅行したいって。

それで大人になって、実際お店で見つけて持ってみたら…重い。
かばんだけでこんなに重くちゃ持ち歩けないって、
買うの諦めました。

情緒があるというか、雰囲気が素敵なトランクでした。





[ 2019/03/17 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

煙の中の楽園『熊の火』


『熊の火』

☆あらすじ☆

小森さんは山の中で仲間に置いてきぼりを食って、
何日もさまよい歩いていました。

足を挫いた小森さんを、仲間ははじめは気遣ってくれていましたが、
日が暮れて雨が降り出すと、みんなの足取りは早くなって
とうとう追いつけなくなってしまったのです。

闇の中、疲れと寝不足のかすんだ目に、ちらちらとタバコの火が
動いているのが見えました。

「向こうから人が来る、助かった」と思いながら近付いて来る姿を見ると
それは二本足で立って、タバコを咥えている大きな熊だったのです。


kkk


山の中で仲間から置いてきぼりを食った若者は人間社会にも仕事にも
嫌気がさしていました。

心身ともに弱っていたときに偶然出会った熊の話を聞いているうちに
熊からの提案を受けることのほうが幸せかもしれないと思うように。

そうして幸せを手に入れたはずなのに、その幸せに慣れてくると
逃げるように熊の話に乗った弱気な自分が情けなく思えてくるなんて、
本当に人間って厄介だなと思いました。

毎日が穏やかで、何不自由なく暮らせる場所を手に入れたら、
ずっとそこに居続けるたいと思うような気がするのですが。

それとも、やっぱりこの若者のようにその幸せを手放したくなるときが
来るのでしょうか。

今の現実に不満を持って、逃げ出したくなることも多いけど、
人間として生きる場所でしか生きられないってことなのかもしれません。


kemu










[ 2019/03/03 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

子ぎつねと布団屋のおじいさんの素敵な電話『コンタロウのひみつのでんわ』


『コンタロウのひみつのでんわ』

☆あらすじ☆

山のふもとに小さな布団屋さんがありました。
おじいさんがたった一人で守っているお店です。

ある春の夕暮れ時、小さな男の子が布団を買いにきました。
「春のふとん」が欲しいという男の子に、
おじいさんは白い小さなバラの模様のついた布団を出してあげました。

「これは、野ばらですね。花ざかりの野ばらですね。
僕は前からこんなのが欲しかったんです。」

すっかり気に入った男の子は布団を家まで届けて欲しいというのです。


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ひとりぼっちの子ぎつねとおじいさん。
思い出を大切にしながら独りで暮らしている二人を繋ぐのは
山にある秘密の電話です。
でも、冬になると電話ができなくなってしまうのです。

離れていてもお互いに思いやる気持ちを持ちながら、
春になってまた電話で話せる時を心待ちにしている二人の姿に
切なさと暖かい気持ちがこみ上げてきました。


私もまた話がしたいなと思う恩人がいます。
このブログを始めるきっかけをくれた人です。
自分には何もないと思っていた私に、
こんなにも好きで夢中になれるものがあったんだと
気づかせてくれました。

その人の誕生日がもうすぐなのです。
感謝の思いを込めて、この物語を贈りたいと思います。




[ 2017/01/22 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

はた織りの青年が求めた憧れの果て『銀のくじゃく』


『銀のくじゃく』

☆あらすじ☆

ある南の島に、腕の良いはた織りの若者がいました。

寝食を忘れるほどに仕事熱心で、
いつもはた織りの新しい模様のことを考えていました。

藍色の大きな蝶や、空の星、青い空ばかりか、
いつしか目に見えない夢や悲しみ、歌なんかを
布の中に表現してみたいと思うようになっていました。

月も星もないある夜、黒ずくめの老人が訪ねてきました。

「ぜひ、あなたに織って頂きたいものがあるのです」と。

それは心を動かされる仕事の依頼でした。


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”おそろしい思いをするかもしれない”と分かっていても
自分の思うような美しいものを作ってみたいという気持ちは
止められなかったのでしょう。

そう思い込んだら引き返せないのかもしれません。

思い通りのものを作り上げたとき、若者はもう元の若者ではありませんでした。
夢と引き換えにたどり着いた果ては…。

きっと、私はこんなふうに何かに夢中になんてなれない。
憧れた夢に手を伸ばした若者が少し羨ましく思えます。

そう思うと彼が選んだ道をただ非難する気にもなれないのです。

終始、薄い霧がかかったような情景を想像しました。
幻想的で淋しさが残る物語です。




[ 2016/12/03 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

泥棒いたちと追いかけっこ『風のローラースケート』


『風のローラースケート』



☆あらすじ☆

山の茶屋のご主人、茂平さんがあることを思いつきました。
「ベーコンをつくってみよう」
それからおかみさんは肉の支度をし、茂平さんは炉を作り落ち葉を集め、
お肉を燻し始めました。
すると、林の中から声がしました。
「何をつくっているんです?」
それは美味しいにおいに誘われて来たいたちでした。

ベーコンが出来上がったら、ひと口分けてあげる約束をしていると、
いつの間にか、反対側にももう一匹いたちがいたのです。

ベーコンをつくっているところをいたちに見られてしまった茂平さんは、
急に気持ちが落ち着かなくなってきました。

二匹のいたちが左右から、身動き一つしないで
自分の仕事をじっと見つめているのです。

嫌な予感がします…


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茂平さんといたちのやり取りがなんだか微笑ましく感じられました。

ずる賢いいたちに茂平さん優しすぎるような気がしますけどね。

そして、ベーコンを作る過程や食べる場面は
本当に美味しそうで、私も食べたくなってしまいました。


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[ 2014/10/19 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

本当に大切な存在に思いを馳せたくなる『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』


『グラタンおばあさんとまほうのアヒル』


☆あらすじ☆

小さなレンガの家に一人暮らしのおばあさんがいました。

おばあさんはグラタンが好きでいつもグラタンを作っています。

その時使うグラタン皿には黄色いアヒルが描かれていて、
この黄色いアヒルは話ができたり、おまけに魔法も使えて
自分がしているエプロンのポケットから
グラタンの食材を出してあげたりもします。


でも、おばあさんがアヒルに頼ってばかりで
自分で買い物に行かなくなってしまった時、
怒ったアヒルはグラタン皿から出て
おばあさんの家からとび出して行ってしまうのです。

アヒルは新しい居場所を探して、
若い奥さんの家のやかんに入ってみたり、
小さな男の子のシャツに入ってみたりします。

でも…どこも安心して長くいられる場所にはならなかったのです。


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本当に大切な存在に気づくとき

特にこの数年、「感謝」とか「誰かを思いやる気持ち」というのに
気づくようになってから、自分の中でクリスマス時期に思い出す作品となっています。

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あまりに近すぎていつもそばにいてくれている存在が
どれだけ大切な存在だったか。

離れてみないと分からないって事があります。

損得無しに思ってくれるから、厳しい事も言うけど、
でも良いところも悪いところも受け入れてくれる存在って
本当に大切な有難い存在なんだなと、改めて感じさせてくれる物語です。




[ 2013/12/15 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

北風の少女が教えてくれたこと『北風のわすれたハンカチ』


『北風のわすれたハンカチ』


☆あらすじ☆

寒い山の中にひとりぼっちのくまが住んでいました。

家のドアにはこんな張り紙がしてあります。

”どなたか音楽をおしえてください。
 お礼はたくさんします。 くま ”


あるとき、熊の家の扉をトントンとたたく音がしました。
重い扉を開けると、髪の毛からつま先まで冷たい青色をした男の人がいました。
その人が乗っている馬もたてがみからひずめまで真っ青です。

嫌な感じはしましたが、男の人が持っている金色の楽器を見つけると、
熊の心は明るくなっていきました。


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北風が置いていったハンカチ

北風の忘れ物がハンカチだなんてなんだろうって。
『北風のわすれたハンカチ』というタイトルが目を引きました。

ハンカチが風に飛ばされて旅をしていくお話が
頭に浮かびましたが全く違いましたね(笑)

タイトルは「わすれた」になっていますが、
私は故意に「置いていった」ような気がしています。

「いつかきっと、ハンカチを受け取りにまた来るよ」という
メッセージを込めた北風の少女の優しさが感じとれました。


音楽さえ覚えれば淋しくなくなると思っていた一人ぼっちのくまが、
北風の少女とのつかの間の幸せな時間を過ごした
優しくて暖かい気持ちになるお話です。




音楽に癒されたいという想い

この物語のくまは、音楽さえ覚えれば淋しくなくなる、
何もかも忘れられると思って、
楽器を教えてもらいたいと思っていました。

私が最も共感したところです。

音楽はずっと、そして今も、私の心の拠り所です。

悲しい時には、優しいメロディに慰められ、
嬉しい時にはアップテンポの軽快なリズムを楽しんだり、
気持ちが荒んでいる時には攻撃的な曲を聴いたりしたこともあります。

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音楽の中に身を委ねていると、
現実を忘れられるような気がしていました。

良いことも悪いことも、楽しいことも悲しいことも
全て実態のないもの、現実ではないものだと思えて
現実逃避の道具にしていたような時期がありました。

でも、音楽に逃げるのって一過性のものなんだと
今は思うようになっています。

今、私にとっての音楽は現実逃避するための道具ではなくて
悲しい時や辛い時の気持ちに寄り添って
落ちて行きそうな気持ちをすくい上げてくれるような、
嬉しいことや楽しいことがあったときには
一緒に喜んでくれているような、
大切な存在になりました。



「雪も、落ちてくるときには音をたてるのよ。」

北風の少女は、雪にも風にも雨にも歌があることを
くまに教えてくれます。

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普段気にも止めない自然にも確かに歌があることを
気づかせてくれたのです。

今の時代はたくさんの音が溢れています。

いつでも好きな時に好きな音楽が聞けて、
家電製品も音が鳴って教えてくれるし、
音がなく過ごすことなんてないんじゃないかと
思えるくらいです。

私も以前は、何か音楽やテレビの音が無いと淋しくて、
とりあえずテレビを付けるのが習慣になっていました。

この物語は自然にも音楽はあるんだよと
教えてくれています。

何も付けずに無音のような中に身を置くと
それでもしっかり自然の音を感じられる時があります。

風の音、雨の音、木々の葉が風に触れる音、
最近では水の流れる音に癒しを感じたりしています。

自然が聞かせてくれる音楽に耳を傾ける時、
何か大切な事を伝えてくれているような気がしています。



関連記事:自然からのメロディ


 
   
[ 2013/08/24 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

ひとりぼっちの猟師と子ぎつねのお話『きつねの窓』


『きつねの窓』


☆あらすじ☆

一人の猟師が、ぼんやりと考え事をしながら歩いていると、
道に迷ったのか今まで見たことのない一面ききょうが咲いている野原に出てしまいました。

あまりの美しさに、少し休んでいこうと腰を下ろしたとき、目の前を白いものが走っていきました。
それは、まだほんの子供の白ぎつねでした。

捕まえようと子ぎつねの後を追うのですが、
ききょうの花畑の中で見失ってしまいました。


その時、後ろで「いらっしゃいまし。」という声が…。

染物屋の店員に化けた子ぎつねに、
ききょうの汁で染めてもらったお指でひし形の窓を作り、その窓を覗くと、
もうけして会うことの出来ない懐かしい人に会えるのです。

kitakitsune.jpg



何故、猟師と子ぎつねは出会ったんだろう…
何故、子ぎつねは自分の正体がバレてしまう危険をおかしてまで、
猟師の前に現れたんだろう…それが知りたくて、何度も読み返していました。

きっと子ぎつねは猟師も孤独だと知っていたのかもしれません。

おんなじ、ひとりぼっち…。

もしかしたら子ぎつねのお母さんを「だーん」と鉄砲でやった相手かも知れません。

きっと子ぎつねはずっと猟師をみてきたのでしょう。、
そして、猟師の中にある淋しい気持ちに気づいたのかもしれません。
だから、ききょうの花から教えてもらった大切な魔法をくれたのだと思うようになりました。

少しでも、猟師の気持ちが癒されて前向きに生きられるように。

憎む気持ちと許す気持ち。

過去にしがみついて生きることと、未来をみて生きること。

そんなことを教えてくれている作品だと思えるようになりました。

ひとりぼっちの猟師と子ぎつねの、
切なくもあたたかい心の交流を描いた作品です。



一人ひとりの心に問いかけてくる物語


「安房直子さん作品」で検索してみると、
必ずといっていいほど、この作品のことに触れています。
『きつねの窓』は安房直子さんの代表的な作品です。

この作品は学校教材(教科書)にも取り上げられているようですが
私にとっては解釈が難しい作品なので、受け入れられていることがとても不思議な思いがします。

人それぞれに自由な解釈を委ねられている作品だから教材として良いのでしょうか。


生前の安房さんの言葉に「ささやかな願い」として
とても印象深い言葉があります。

「私の作品は、あまり切りきざまずに、
まるごと読まれてほしいと願っています。」


この言葉が意味するところを私なりに解釈するとすれば、

「国語を学ぶための材料としてよりも、
子供たちの自由な創造の中で幾通りもの展開が生まれる事を願う」

そんなふうにも読み解ける気がしています。


私がこの作品を知ったのは中学生の時でした。

こちらにも書いていますが当時読んでいた少女漫画に、
『きつねの窓』について書かれていたのを目にしてからでした。

主人公が子ぎつねや猟師のように、
指でひし形をつくって覗き込む場面がありました。

短い場面でしたが、とても印象に残っていて『きつねの窓』がずっと心の中に引っかかっていました。

それから数年後、偶然に街の本屋さんで再会することになり、
『きつねの窓』のみならず、安房さんの作品に惹かれていくことになりました。



関連記事:「文字で表現する色彩」


[ 2013/08/14 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)
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Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。

*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


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