童話作家 安房直子さんが遺した景色

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おじいさんと少女の安らぎの場所『花の家』


花の家


☆あらすじ☆

ある大きな町の真ん中に、大きなお屋敷がありました。
お屋敷の周りには、一巡りするのに十五分もかかるほどの長い塀、
塀の中には木立ちがうっそうと生い茂っていました。

厳しい鉄の扉をくぐり、どこまでも続く白い飛び石の突き当りに、
やっと家の灯りが見えるのです。
その家には、もうすぐ百歳に手が届きそうなおじいさんと、
やっと十六歳になったばかりのお手伝いの少女が住んでいました。

あんまり長生きしたせいでおじいさんの家族は先に亡くなってしまい、
身寄りはこの世に一人もいないというのがおじいさんの口癖でした。

少女は大変な働き者でおじいさんの世話はもちろん、
広い家の掃除から庭の手入れまで一人でしました。

庭にはたくさんの木とがありました。
ある日のこと、おじいさんはこんな事を言いました。

「私はこの庭に黄金をどっさり埋めておいたよ。
…私が死んだらそれをみんな、あんたにあげよう」



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裕福でも…裕福だからこそ、人の嫌な部分を色々見てきたであろうおじいさんと、
身寄りがなく孤独に耐えてきたことが垣間見える少女

二人の楽しみは、縁側に座ってたちや庭にやってくる蝶を眺めること。
時間が止まって、どこか例えようもなく美しい別の世界にこもっているような
そんな気分になるのです。

穏やかな日々でしたが、二人に別れのときがやってきました。
おじいさんが残してくれたもの、それはお金に代えがたいものでした。

少女は黄金を見つけたとき、喜びでいっぱいになりました。
懐かしい両親にやっと出会えたような思いに満たされました。

ずっと一緒に、庭の木やを大切にしてきたからこそ、
たった一人、生きていかなくてはならない少女に必要なものが、
おじいさんには分かっていたのでしょう。







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お月さまのいたずら『天窓のある家』


『天窓のある家』


☆あらすじ☆

何年か前、友人の別荘でのことです。

色々悲しいことが重なり、参ってしまったぼくに
友人がそこへ行くことを勧めてくれたのです。
「誰もいなくて静かだし、山小屋でしばらく静養してきたらいいよ」と。
そして、春の初め三日ほどを、そこでたった一人で過ごしたのでした。

その家には天窓がありました。
ぽっかりと真四角に切り取られた天井の穴にはガラスがはめこまれていて、
昼間は少し眩しいですが、夜には星や月が見えました。

庭にはこぶしの木があって小屋の屋根半分に覆いかぶさって枝を広げ、
真っ白な花がたくさん咲いていました。

三日目の満月の晩のこと。
月の光がことさら明るく、天窓の下に敷いた布団の上に、
こぶしの木の影がくっきりと落ちていました。

思わず手を伸ばして枝についた花の影に触ってみると、
銀色に光りはじめました。
ぼくはその銀の花を一輪摘んでみました。
すると本当に花の影がつまめたのです。

朝目を覚ますと、ぼくは昨夜の銀の花を握っていました。

そして一枚の花の影を自分のものにしたときから、
不思議な声が聞こえてくるようになりました。

”かえして かえして 影をかえして”と。


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思いがけず何かを手に入れてしまったとき、
それがあんまり魅力的で心揺さぶられるものであったなら、
きっと、手放すのが惜しくなってしまうのでしょう。

たった一枚の花影から木の養分をもらったおかげで元気を取り戻した「ぼく」。

そして、それとは対照的な状況になったこぶしの木。

何年も経って、その後のこぶしの木のことを知り
「すまなかったな」と口にした「ぼく」の心情を思うと、
なんだか私は淋しさや諦めのような感情が湧いてきました。

本当の気持ちはどうなんだろうか。
もしかしたら、相手が人間ではなければ、後悔や謝罪の気持ちは
自然といつの間にか薄れていくような気がしたから。

それが、自分を含めての「人間」なのかもしれないと考えさせられた物語でした。

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プロフィール

すきっぷ

Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


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