童話作家 安房直子さんが遺した景色

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味の小人がくれた魔法と大切な約束『魔法をかけられた舌』


魔法をかけられた舌

☆あらすじ☆

突然の不幸で父さんのレストランを受け継いだ洋吉。
怠け者だった洋吉は評判だった父の味の秘密を知ることなく
ひとりぼっちになってしまいました。

「何もかもおしまいだ」そう思った時、
コックの身なりをした小人が立っていました。

それは食料品の倉庫になっている、地下室の番人をしている小人でした。

店を売ってしまおうかという洋吉に、たった一つ大切な約束を守ってくれるならと、
とびきりの魔法をかけてくれたのです。

小人がくれた魔法、それは失意の中にいた洋吉にとって希望の光でした。
これからは真面目に一所懸命に料理の勉強をして、
父さんが遺してくれたレストランを守っていくと誓ったはずでした。

しかし、魔法のおかげでいとも簡単に欲しいモノを手に入れてしまうと
父さんが遺してくれた味も、小人との大切な約束もすっかり忘れてしまったのです。

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洋吉は、努力をしなくても思い通りにいってしまったために、
大切な小人との約束を忘れてしまいました。

もしかすると小人はこうなることが分かっていたのかもしれません。

三十年も食料品の倉庫になっている地下室の番人をやっていて、
そのご褒美にごちそうにもありついていたというのですから、
あまりに違いすぎる父親と息子のことも分かっていたのでしょう。

それでも、この店の味が消えてしまうのは惜しいと、
洋吉に望みを託したのだと思います。

欲しいものが簡単に手に入ったとき、人は自分の実力を錯覚して
傲慢になっていきます。

大切な約束も忠告も、都合の良いように無かったことになっていきます。

でもそんなごまかしは、いつかは消えていくでしょう。

いつか、心の底から手に入れたいものが出来て、
それが手に入らなかったときに今までの過ちに気づくのだと思います。

そして洋吉も、自分の過ちに気づいたとき、辛抱強く待っていてくれた小人に
謝罪と感謝の言葉を口にします。

小人は洋吉を責めるようなことを言いませんでした。

「ずいぶん待ちましたよ」
その言葉だけで小人の気持ちが痛いほど伝わってきました。

父親と小人が残してくれた大きな愛に気づいて、
洋吉は変わっていくでしょう。

地下室から調理場へと階段を上っていく姿に清々しい思いがしました。




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[ 2019/03/13 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)
プロフィール

青と緑璃

Author:青と緑璃
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」改め「青と緑璃」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに



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