童話作家 安房直子さんが遺した景色

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貧乏絵かきと不思議な窓のお話『春の窓』


『春の窓』

☆あらすじ☆

小さな町に売れない絵かきがいました。
部屋のストーブの燃料も買えないほど貧乏なのです。
ある日のこと、寒さを凌ぐために毛布にくるまっていますと
誰かがドアをたたきました。
出てみると、そこには一匹のまだらの猫が立っていました。

猫を飼うとお金をかけなくても暖かくなると言う猫の提案で
絵かきはこのまだらの猫を飼うことにしました。
寝るときは猫をだいて、絵を描くときには襟巻きがわりにしたり。

それでもやっぱり窓のない北向きの部屋は寒いのです。

「南側の壁に窓を描いてください。」

壁に描いた窓の絵を魔法で本物にすると言う猫に戸惑いながらも、
夢や希望が入ってくるような窓を思い浮かべ絵かきの心は動きました。

幾日か過ぎ、南の壁に大きな窓の絵が出来上がりました。
一面広がる春の草原と、その向こうを小さな電車が走っている絵です。
そこに白いカーテンをかけると猫は長い呪文を唱えました。

そして、カーテンを開けるとそこには本物の草原が広がっていたのでした。


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壁に描いた窓が本当の窓になって描いた通りの景色が広がっている。
こんな窓があったら本当に素敵だなと思いました。
私は窓から外の景色を眺めるのが大好きです。
一番好きな場所はよく利用する図書館。
図書館って外光が入らないような造りのイメージなのですが、
そこは大きな窓があって窓の方に向いて椅子が並べてあるのです。

図書館の二階から見えるのは目の前の駅のホームと家並みと畑、
あとは遠くまで続く空が見えるだけのような景色なので、
天気のいい日はその窓向きの椅子に座って空を眺めているのが
幸せを感じるひとときなのです。

物語の文中にもありますが、本当に窓っていいものです。

そして、絵かきさんのところにきた不思議な猫。
こういうお話を読むと、言葉を話す動物に会ってみたくなったりします。
言葉を話せる人間には上手く気持ちを伝えられないくせに、
言葉が話せる犬や猫になら伝えられそうな気がして。
でも実際には動物が苦手なので…矛盾してますね。

この物語の猫は、ちょっと図々しくて、口が上手くて、しっかりもの、
上から目線のちょっと苦手なタイプだったんですけれど、
うだつの上がらない絵かきさんには丁度いい相棒だったのかも。
私もうじうじして誰かに背中を押してもらわないと動けないので
この位ハッキリしてる相手の方がいいのかもしれません。

それにこの猫、絵かきさんのために「最後の魔法」を使ってくれるのですが、
それがなんだか切なくて、胸がちょっとぎゅっとなるような感じでした。

でも最後はタイトルのような爽やかなラストだったと思います。









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風鈴がうるさいと葉書が届きました。『秋の風鈴』


『秋の風鈴』

☆あらすじ☆

ある日のこと、貧乏な絵かきの「僕」の部屋にこんな葉書が届きました。

「おたくの風鈴がうるさくて夜ねむれません。
 あたし達は、もう長い間寝不足なのです。
 夏のあいだは、がまんしていました。
 でも、もうそろそろとりこんでくださったらいかがでしょう。」


毎日、良い気持ちで聞いている風鈴の音がうるさいだなんて
考えてもみないことでした。
あの音が気になって眠れずにいる人がいるなんて。

絵かきは古いアパートの一階に住んでいました。
差出人の名前が無い葉書を見ながら、
隣近所の人たちを思い浮かべましたが誰なのか分かりません。

この風鈴は大切な思い出の品でした。
夏になる前、過ごした山村で出会った少女がくれたものなのです。
軒下にかけておくとそれだけで仕事に集中することができました。
そして、良い絵がかけるようになった気もしているのです。
それなのに、この葉書だけでしまうわけにはいかないと、
なかば意地になってそのままにしていました。

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それから十日ほどして、大量の葉書の束が届きました。
葉書の重みで郵便箱が床に転がり落ちてしまったほどです。
その全部が風鈴に対する抗議文でした。
葉書の字はどれも似たような筆跡で、
植物の葉を思い出させる草のつるの様なペン字です。

これほどまでに風鈴に迷惑している人がいるなら…、
絵かきは思い出の風鈴を軒下からはずしました。

それからは、何事もなく日々は過ぎていきました。
ただ絵かきだけは、水の底に沈んでいるような虚しさを感じていました。

そして、十月のある秋晴れの朝。
雨戸を開けた絵かきは、何もかもがすっかり分かったのでした。


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風鈴は日本の夏の風物詩。
一軒家の実家にいた頃は風鈴の涼やかな音色が心地よくて好きでした。
それに隣近所から風に乗ってかすかに聞こえてくる風鈴の音も風情がありました。
あの頃は風鈴の音が邪魔になるなんて考えたことなかったと思います。

でも、家を出てアパートで一人暮らしを始めた時です。
お隣さんがベランダに風鈴を下げていたのです。
最初、かすかに聞こえる音を懐かしく楽しんでいたのですが、
一日中少し強めの風が吹き続けていたとき、
こんなにも風鈴の音に悩まされるのかと思った時がありました。

窓を閉めていても隣のベランダの風鈴の音ははっきり聞こえます。
ワンルームなので逃げ場がないところで眠るしかなく、寝不足になりました。
そのうちに、自分でもうるさいと思ったんでしょうか、
お隣の風鈴の音は聞こえなくなっていました。


最近、涼しくなってきました。
もう、夏もおわりですね。




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Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


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