童話作家 安房直子さんが遺した景色

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片目の黒猫と三日月村の秘密『三日月村の黒猫』


三日月村の黒猫


☆あらすじ☆

山本洋服店の息子、さちおが初めてその猫に会ったのはある夏の夕暮れ時、
西の空に細い三日月がかかり始めた時刻でした。

さちおの家はたくさんの借金を抱えて、今日倒産したのです。
家は表通りの大きな仕立て屋でした。
三代も続いた老舗を三代目のおさんが潰してしまったのです。

今朝、店を立て直すお金を工面するためにしばらく帰れないと言い残して
さんは青い顔で、ふらりと出掛けていきました。

それから、長いこと店の前にうずくまっていたさちおに
優しく声をかける者がいました。

「あなたを助けに来ましたよ。」

その声の主は、大きな黒猫でした。
片方だけ金色の目がきらりと光る、片目の黒猫が一匹、
さちおの横にのっそりと立っていたのです。

それは亡くなった方の三日月村に住むおばあさんから頼まれてやってきた
召使いの黒猫でした。

黒猫はつかつかと店の中に入っていきました.
そして、あとを追うさちおにこう言ったのです。

「さあ、しばらくの間、私と一緒に暮らしましょう。
山本洋服店を一緒にやっていきましょう。」


mimikkkkkkk




さちおと黒猫が出会った場面は不気味なはずなのに、
三日月がのぼる夜だとなんだか神秘的です。

ボタンを手に入れるために三日月村に行く道のりや
りすたちがボタンを作る場面は想像するのが楽しかったです。

その反面、三日月村の正体やおばあさんやおさんの想い、
「おさんでもあるし、おばあさんでもあるんだよ。
私の中にお前のおさんがいるんだよ。」
というおばあさんの言葉に考えさせられたりもしました。

場面が目まぐるしく変わる幻想的なお話なのですが、
司修さんの絵が加わると、アドベンチャー的な要素も感じられました。

読むたびに印象が変わる、何度も読み返してきた作品です。







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きつねの親子とお客様『きつねのゆうしょくかい』


きつねのゆうしょくかい


☆あらすじ☆

「ねえ、おちゃん。今度うちへお客を連れてきてちょうだい。
夕食会をしたいの。」

ある朝、きつねの女の子はおさんきつねにいそいそと話しかけました。

「せっかくのあれ、使わなくちゃ…」
きつねの女の子は、戸棚に並んだ六つのコーヒーカップを指さしました。
それはにせがまれて、おさんきつねがやっと手に入れてきたものでした。

さんきつねはお客なんてバカげたことだと思いました。
第一、ごちそうが倍だけ減るのです。

「人間のお客を呼んでみたいと、ずっと前から思ってたの」

まるで、初めからそれだけ考えていたように、のきつねはきっぱりと言いました。



shosho



夕食会だなんて、どんな料理が出るのか興味がありましたが、
メニューを見ただけでも美味しそうな料理が並んでいました。
最後には焼きリンゴとお茶も出るとか。

さんとだけの暮らし。
女の子は友達が欲しかったのかもしれません。
お客さまを招いて楽しい時間を過ごしたかったのでしょう。
それも、人間のお客さまを。

はたして、おさんは人間のお客さまを連れてくることが出来たのでしょうか。

お父さんのを思う気持ちと行動がなんだか笑ってしまいました。
お互いのいろんな勘違いも手伝って、なんとかテーブルに揃った六人。
ずっと前からの知り合いのように話が弾んで、楽しい時間を過ごせたようです。

このラスト、私は好きな流れです。
ビックリして、クスッて笑って、これで良かったのかもね~って思って。

、お客さま、それぞれのやりとりが面白くて、楽しいお話でした。


koko



*今日は平成最後の日。色々あったけれど、ありがとうございました。






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[ 2019/04/30 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

亡き娘を想うおやじさんのおでん屋台『雪窓』


雪窓


☆あらすじ☆

山のふもとに、おでん屋台がでました。

お店の名前は『雪窓』。

愛想のいいおやじさんと助手のたぬきで切り盛りしている屋台です。

ある晩のこと、若いのお客がきました。

十年も前に死んでしまったの美代にどことなく似ています。

生きていればこのくらいの年格好でしょう。

そして、が越えてきたという峠の向こうは、
美代に関わりがある場所だったのです。

おやじさんはの忘れ物を届けようと
たぬきと一緒に屋台を引いて峠を越えることにしました。


山道.jpg


親の愛は、見返りを求めない無償の愛なのでしょうね。

そして、子供はその想いを当たり前と思わずに、
産み育ててくれた感謝を忘れてはいけないのだと思わされました。

が互いに思いやる気持ちが、優しく表されている作品だと思います。



の誕生月

2月になりました。

今日は一日雪が降り続いています。

まだまだ止む気配はなく、横なぐりの大粒の雪が降っています。

雪.jpg

部屋の中から見る雪は綺麗なんですけれどね…。

立春とは名ばかりの2月は本当に苦手。

今日は外出の予定をキャンセルして部屋で過ごしました。

これから雪が止んだあとも路面の凍結には注意しないと
いけないですね。

月曜日まで雪の影響がありそうで憂鬱…。

みなさんも外出時には足元にお気をつけ下さいね。


そんな苦手な2月は他界したの誕生月でもあります。

もう誕生日は過ぎましたがその日は懐かしく穏やかな気持ちで
のことを思い出しました。

正直、親も苦手だったな~(笑)

こんなふうにの誕生日に父の事を思い出すのは、
父が他界してからです。

職人気質で気性が荒くて、いつも怒ってばかりの父を理解できず、
お酒を飲むと荒い気性は余計に酷くなるので、
ますます嫌いになっていきました。

亡くなる前、一年ほど脳梗塞で倒れて入院生活をしていた時、
はっきりしない意識の中で時折言っていたのは、
「何にも残してやれなくて悪かったな」と言う言葉でした。

そう言う時の父はいつも泣きそうな声と顔になりました。

父は家族を思いながら生きていたのだと気づいた時、
育ててもらっていることに感謝することなく生きて、
父を拒絶し、優しく出来なかったことを後悔しました。

きっと、私が表面的なことにしか目がいかなくて、
父のことを分かろうとしなかったのかもしれません。

家族とのコミュニケーションは下手だったけれど、
一所懸命に仕事をして家族を養ってくれていたこと、
不器用な父には家族のために頑張って働くことが
唯一の愛情表現だったのかなと今更にして思います。

幼い頃をよくよく思い返してみれば、
父の膝の上は私の特等席でしたし、
父に耳かきをしてもらいながら寝てしまうのは至福の時だったなと
懐かしく思い出しました。



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プロフィール

青と緑璃

Author:青と緑璃
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」改め「青と緑璃」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに



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