童話作家 安房直子さんが遺した景色

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知ってしまった耳飾りの秘密『奥さまの耳飾り』


『奥さまの耳飾り』


☆あらすじ☆

お屋敷の奥さまが耳飾りの片方を無くしてしまいました。
薄桃色の大きな真珠の耳飾りで、お屋敷のどこかに落としたようなのです。

それは、奥さまが御結婚の時に旦那さまから贈られた品物でした。
旦那さまは大金持ちの貿易商でほとんどを海の上にいるのだそうで、
小夜がこのお屋敷に奉公にあがって半年経つのですが、
まだ旦那さまにはお目にかかったことがありません。

その日の夕暮れ時、小夜は庭に落ちている耳飾りを見つけたのです。

くちなしの木の下に、こぼれた露のように落ちていた真珠を
小夜は自分の右の耳につけてしまいました。

すると、小夜の耳に不思議な音が聞こえてきました。

それは海の渚の音でした。


shinshin




その宝物はあまりに綺麗で魅惑的で、惹きつけられるものだったのでしょう。
小夜はこんなことをしてはいけないと自分に言い聞かせながらも
それを身につけてみたいという思いを抑えることが出来ませんでした。

真珠の耳飾りの秘密は奥さまと旦那さまだけの秘密でした。
たった一度だけならという思いが消してしまった悲しい魔法。

味戸ケイコさんが描く、夜の海と満月、そしてあれは奥さまの後ろ姿でしょうか。
なんとも切なく、悲しい、そして美しい挿絵が印象的です。






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海にギターを預けてきました。『海からの電話』


『海からの電話』


☆あらすじ☆

音楽学校の学生、松原さんはギターを持って海に行きました。
誰ひとりいない海辺の砂浜に買ったばかりのギターを置いて、
ほんの少し、たった五分か十分昼寝をしたのです。
はっと目を覚ますと、もうギターは壊れていました。
ギターの弦、六本すべてが切れていたのです。

「だれだ!こんなことをしたのは」
誰もいないはずの海辺で松原さんは大声で怒鳴りました。
すると、思いがけず近くから、小さな声が聞こえました。
「ごめんなさい」

そして、あとからあとから沢山の声になっていったのです。
「ちょっと触ってみただけなんです」
「壊すつもりなんかひとっつもなかったんです」
「僕たちも音楽をやってみたかったんです」

砂の上をよくよく探してみると、それは沢山の小さなカニたちでした。

gigi




 安房さんの作品には楽器がよく出てきます。

オルガンやトランペット、バイオリンやハーモニカなんかも。
そして、時には歌を歌っていたりもします。

安房さんが楽器をやっていたという記述は記憶にないのですが、
きっと音楽がお好きだったんだろうなと思うのです。

それから、これは何となく感じていたことなのですが、
安房さんの文章はリズム感があるなと思っていました。
人によって感じ方は様々だと思いますが。
うまく伝えられないのですが、声に出して読んでみると
その感覚は顕著に感じられて、読み進むのがなんだか楽しいのです。
「あ、コレコレこの感じ」っていう自分にしか分からない感覚なんですけれど。
そう思うと文章を書く事と音楽の繋がりは深いように思ったりもします。

安房さんご自身は言葉や文章のリズムを大切にして、
それを意識して書いていらしたのかなと思うときもありますが、
それは私の想像の範囲内で、今となっては知る由もありません。

昨日、2月25日は安房さんのご命日でした。
ご健在であったならどんな作品をお書きになっただろうと、
思わないこともありません。
でも、遺してくださった作品があります。
まだまだ知らない作品が沢山あって、それを読む楽しみがあります。

それに今まで読んだ作品も、読み返すと内容を知っているはずなのに
新たな感想や感動が生まれる時があります。
この感覚は文筆に限らず、音楽もそうだなと思ったりします。

新しい作品に触れられなくなったら、
いつか飽きてしまうのだろうかとか、
いつか忘れてしまうのだろうかと思ったこともありました。
でもそんなことは全くなくて、
何度読んだって、何度聴いたって感動が薄れることは無いのです。

作品に出会え、共感して惹かれたことに、ただ感謝しています。





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Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。

*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


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