童話作家 安房直子さんが遺した景色

安房直子さんの作品を紹介しています。
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たったひとつの嫁入り道具『木の葉の魚』


木の葉の魚


☆あらすじ☆

アイは貧しい漁師のでした。
財産は何一つ無く、借り物の小舟が一そう、借り物の網が一枚あるだけ。
そして子供が十人もいるのに、父親は病気ばかりしているといった具合です。

一番上ののアイがお嫁にやらなくてはならない年頃になったとき、
遠い村から時々やって来るばあさんが山番をしている息子の嫁に
アイを欲しいと言って来たのです。

アイが村を離れる前の晩、親は古いを一つ出してきてこう言いました。

「これがお前のたったひとつの嫁入り道具だよ。
汚いだけれど、これひとつがお前を幸せにするからね」

このに山の木の葉を入れて、蓋をしてからちょっと揺するだけで
とびきり美味しい焼きが出来る不思議ななのです。

それは親の祈りがこもっているでした。
アイが幸せになるように百日、海の神様にお願いしてもらったものなのです。



sasassss




親がアイにを渡したとき、やたらにこの鍋を使わないよう忠告をしました。

使うのは嫁入りした日と、本当に大事な時だけ。

木の葉が焼きに変わるとき、海のが同じ数だけ死んでくれるという言葉に、
ドキリとしました。

普段、や肉を食べるときそんな事を考えるでしょうか。
生命を頂いている…言われてみれば、それはそうなのですが、
それを考えながら食卓に上がったや肉を見たら、
なんだか箸をつけられなさそうです。

作中に”海の魚は山の木の葉と同じ”という言葉があります。
それは取っても取っても無くならないもの。
限りある生命として見ていない証拠です。

こんなふうに突きつけられると、ずいぶん私はいろんなものに目を背けて
生きているんだなと思わされます。
悪気が無くても、無意識のうちに感謝する気持ちを忘れているのです。

最後の一行。
”アイの親のやさしい声が、おいで、おいでと呼んでいます。
もうすぐ、もうすぐなのです”

私には、なんだか背筋が寒くなる一行でした。







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[ 2020/05/04 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

片目の黒猫と三日月村の秘密『三日月村の黒猫』


三日月村の黒猫


☆あらすじ☆

山本洋服店の息子、さちおが初めてその猫に会ったのはある夏の夕暮れ時、
西の空に細い三日月がかかり始めた時刻でした。

さちおの家はたくさんの借金を抱えて、今日倒産したのです。
家は表通りの大きな仕立て屋でした。
三代も続いた老舗を三代目のおさんが潰してしまったのです。

今朝、店を立て直すお金を工面するためにしばらく帰れないと言い残して
さんは青い顔で、ふらりと出掛けていきました。

それから、長いこと店の前にうずくまっていたさちおに
優しく声をかける者がいました。

「あなたを助けに来ましたよ。」

その声の主は、大きな黒猫でした。
片方だけ金色の目がきらりと光る、片目の黒猫が一匹、
さちおの横にのっそりと立っていたのです。

それは亡くなった方の三日月村に住むおばあさんから頼まれてやってきた
召使いの黒猫でした。

黒猫はつかつかと店の中に入っていきました.
そして、あとを追うさちおにこう言ったのです。

「さあ、しばらくの間、私と一緒に暮らしましょう。
山本洋服店を一緒にやっていきましょう。」


mimikkkkkkk




さちおと黒猫が出会った場面は不気味なはずなのに、
三日月がのぼる夜だとなんだか神秘的です。

ボタンを手に入れるために三日月村に行く道のりや
りすたちがボタンを作る場面は想像するのが楽しかったです。

その反面、三日月村の正体やおばあさんやおさんの想い、
「おさんでもあるし、おばあさんでもあるんだよ。
私の中にお前のおさんがいるんだよ。」
というおばあさんの言葉に考えさせられたりもしました。

場面が目まぐるしく変わる幻想的なお話なのですが、
司修さんの絵が加わると、アドベンチャー的な要素も感じられました。

読むたびに印象が変わる、何度も読み返してきた作品です。







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[ 2020/04/26 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)

こふきちゃんと母ちゃんとコロッケと『コロッケが五十二』


『コロッケが五十二』


☆あらすじ☆

町の肉屋でもう何十年も使われている大きな大きなおなべがあります。
ぶ厚くて、黒くて重くて、叩くといい音のするおなべです。
毎日、長いかねのお箸と一緒に美味しいおかずをこしらえています。

しかも、このおなべで作ったコロッケはまるで生きているように
歌でも歌いながら今にもコロコロ転がりそうに見えるのです。


この肉屋に小さい女の子がいました。
ふっくりと色白で、まるで粉ふきいもみたいな子なので
みんなは「こふきちゃん」と呼んでいました。

幼い頃からお母さんを真似ては、売り物にならないコロッケを作っていたので、
だんだんと”コロッケぐらい一人作れる”と思うようになりました。

それをお母さんに言ってみましたがお店が忙しいお母さんは
こふきちゃんの相手などしてくれません。
腹を立てたこふきちゃんがまな板の上のコロッケを払い落とすと
おかみさんはとてもこわい顔をして叱りつけました。

びっくりしたこふきちゃんは顔をくしゃくしゃにして泣き出しました。
床に寝転んで、手足をバタつかせ泣き続けました。

けれど、そんなことをしても誰もかまってはくれませんでした。

korokoro 



ずっと小さい頃から店先で母ちゃんの真似事をしていたこふきちゃんは
いつしか、コロッケなんて自分一人でも出来るような気になってきました。
「母ちゃんのお手伝い、ちゃんと出来るよ」って言いたかったのかもしれません。

なのに、忙しい母ちゃんは話をまともに聞いてくれません。
だから、怒ってコロッケを払い落としてしまったのでしょう。

怖い顔で叱りつけた母ちゃんにビックリして泣いちゃって、
床に寝転んで鼻と涙でぐしょぐしょになっても誰も構ってはくれなくて…。

その情景とこふきちゃんの気持ちが分かりすぎるほどに分かって
笑ってしまいました。

こふきちゃんが騒いでも動じない母ちゃんと、頑固でめげないこふきちゃん。
きっと似た者同士なのかもしれません。


お話の終盤、母ちゃんが文字通り「体を張って」こふきちゃんを助けたあと、
家へ帰る二人の会話がとても良いな~って思いました。

母ちゃんの「なにいってるの」っていう言葉が優しく聞こえるようでした。




今日は母の日♥
kaachan 






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[ 2019/05/12 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)
プロフィール

すきっぷ

Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


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