童話作家 安房直子さんが遺した景色

安房直子さんの作品を紹介しています。
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踊りが上手になりたいお嬢さんへ『うさぎのくれたバレエシューズ』


『うさぎのくれたバレエシューズ』


☆あらすじ☆

その女の子はバレエ教室に通い始めて5年も経つというのに
踊りが上手になりませんでした。

くるくると鮮やかに回れないし、先生の言うとおりに手も動きません。

それでも、音楽が鳴れば踊りたくてたまらなくなるのです。

女の子の願いはたったひとつだけでした。

「どうか、踊りが上手になりますように」


ある朝のこと、不思議な小包が届きました。
それは一足のバレエシューズでした。
そして、一緒に入っていたカードにはこんなことが書かれてありました。

「踊りが上手になりたいお嬢さんへ 山の靴屋」


barerere




好きなのに、それが上達しないもどかしさや辛さ。

自分なりに頑張っているのに思ったように出来なくて、
他の人達がどんどん先に行ってしまう不安で押しつぶされそうになる。

願うだけでは叶わないと分かっていながらも、月や星、遠い山にまで
お願いをしてしまう気持ち。

これまでに何かに夢中になって、それでもうまく行かなかった経験がある人には
この少女の気持ちを自分に重ねてしまうのではないでしょうか。

物語のように、笑顔で終われなかった結果であったとしても、
夢中になれることが見つかって、もっと上を目指して努力する気持ちは
失くしたくないと思いました。

なにかに夢中になっているときって、私はただひたすらに楽しいですから。





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[ 2019/05/19 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(0)

子猫を捨ててきなさいと、さっきお母さんが言ったのです。『やさしいたんぽぽ』


『やさしいたんぽぽ』


☆あらすじ☆

誰もいない日が暮れた春の野原に、女の子が立っていました。
女の子はエプロンの中に白い子猫を隠していました。

子猫は静かに眠っています。
さっき、お母さんがこの子猫を捨ててきなさいと言ったのです。
「眠っているうちに、さあ、早く早く」と。

捨てられた子猫は、そのあとどうなるでしょう。
真っ暗闇の中、目を覚ました子猫が鳴いても誰もいなくて…。
考えただけでも恐ろしいことです。

女の子は泣きながらつぶやきました。
「助けて、助けて、誰か助けて…」

すると、女の子の足元がピカッと光ったのです。
まるで黄色い豆電球が灯ったように。
そして、黄色い灯りはあっちにもこっちにも広がっていきました。

それは、特別な夜だけに光るたんぽぽだったのです。


tanpopo.jpg




きっとこの猫は元々捨て猫だったのでしょう。
たぶん、生まれて間もない小さな命。
それを見つけた女の子は可哀想になって家に連れ帰ったのでしょう。

もし、この子の家で猫か犬、動物を飼っていたなら迎え入れられることも
容易だったかもしれません。
でも、動物を飼っていなければ、いきなり連れてこられても、
飼うことを躊躇してしまうお母さんの気持ちも分かる気がします。
きっとお母さんも女の子を悲しませたいわけでは無かったはず。

優しいたんぽぽたちに出会ったおかげで子猫は安らげる場所へ
旅立つことができました。

ホッとした気持ちと、本当にこんな場所があったら良いのにと、
思わずにはいられなくなった物語でした。


shiro






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[ 2019/04/28 00:00 ] お話「や行」 | TB(-) | CM(0)

ひとりぼっちのおばあさんと不思議なスカーフ『黄色いスカーフ』


『黄色いスカーフ』


☆あらすじ☆

春間近のある朝、外出時に大きなスカーフを持っていくと便利だという
新聞記事を読んだ、一人暮らしのおばあさん。

なるほど、私も試してみようかしらと、たんすの中から
目も覚めるような鮮やかな黄色い絹のスカーフを取り出してみました。

すると、心が明るくなってどこかへ出掛けたくなりました。

いそいそと、濃いオリーブ色の新しいワンピースに着替えて、家を出ました。

並木道を歩いていると風が吹いて髪が乱れたので、
さっそく黄色いスカーフで髪を包んでみました。

そして、通りがかりのクリーニング屋のガラスに写った自分を見て
たちまち真っ赤になってしまいました。

頭にカナリヤ百羽乗せてるみたいな派手な姿だと思ったのです。

大急ぎで黄色いスカーフをむしり取ると、クシャクシャに丸めて
バッグに放り込みました。

急ぎ足で歩きながら、おばあさんは恥ずかしくてたまりません。

すると、いきなりバッグからこんな声が聞こえてきました。

「ひろげて、ひろげて」
「こんなにクシャクシャにされたんじゃ、息もつけない」

それは、バッグに丸めて放り込んだ、黄色いスカーフの声でした。


kiki



ひとりぼっちで暮らしている主人公のおばあさん。
春が近づく陽気に誘われてどこかに出掛けてみたくなりました。

こんなときに、電話でもかけて気軽に話のできる娘でもいたら…
という思いが湧き上がってきましたが、まだ元気だし、住む家もあるし、
お金にも困っていないのだから、そんな贅沢は言わないことにしましょうと、
思いを打ち消していきます。

そして、「私は幸せ者です」と、自分に言い聞かせるように
一人で出掛けて行くのです。

不幸じゃないけれど、なんだか胸にある淋しさに気づく瞬間。

けれど、これまでの生活は自分で選んできたことも事実。
それを分かって、何不自由なく暮らせている自分は幸せだと…。

少し切なさや淋しさを感じてしまうお話なのですが、
初春の雰囲気や暖かい季節の楽しみも感じられる作品です。

黄色いスカーフ、黄色いオレンジ、黄バラ、
黄色いカナリヤ、黄色いブリン

桜のピンク色も可愛いけれど、黄色も春に似合いますね。





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[ 2019/03/31 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

森の小さな病院とうぐいすのお話『うぐいす』


『うぐいす』


☆あらすじ☆

森の中に、年取ったお医者さんと年取った看護婦さんの夫婦だけで営んでいる
古い小さな小さな病院がありました。

玄関のドアには「みならいかんごふさんぼしゅう」の張り紙がしてありますが
まだ来てくれる人はいませんでした。

お医者さんも看護婦さんも疲れ切っていました。
この病院も、もうおしまいにしなければならないだろうかと思うのですが、
頼ってやってくる村の人たちを思うと、なかなか決めかねずにいました。

ある春の明るいお月夜の晩でした。
「こんばんは」と玄関で呼ぶ声がしてお医者さんが出てみると、
とても小柄な若い娘が立っていました。

そして、「わたし、看護婦さんになりにきました」と言うのです。

それは以前怪我の治療をしてあげたうぐいすでした。

怪我をして病院の庭に倒れていたところを近くの子供が拾って
お医者さんに預けた緑色の小鳥でした。



ugugu




このお話の絵がとても素敵で好きです。
森の中の小さな病院。
お医者さんと看護婦さんご夫婦。
そして、小枝のように華奢で小さいうぐいすの看護婦さん。

春の柔らかさを感じられる絵で、本のページをめくるたびに
優しい気持ちになりました。


寒さの中にも暖かい陽射しが混じるようになった今日この頃。
そして、うぐいすの声を聞く回数も増えてきました。

姿は見えないのに、あの「ホーホケキョ」って鳴き声が
どこからともなく聞こえると春の気配を感じられて嬉しくなります。





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[ 2019/03/21 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(0)

雪に埋もれた小さな家から聞こえてくるのは『すずをならすのはだれ』


『すずをならすのはだれ』


☆あらすじ☆

寒い寒い2月のこと。

真っ白な森の中を、真っ白なうさぎが通りかかりました。

「よもぎの葉っぱを三十枚、ハコベの葉っぱを十五枚…」

うさぎはこれから森の向こうの町までおつかいに行くところです。

あんまり急いでいたので、ツルッと滑ってしまいました。
滑った拍子に、雪をかぶった小さな一軒家にドシンとぶつかってしまったのです。

小さな家の扉には磨き上げられた銀色の鈴が付いていて、
”ごようのかたはすずをならしてください”なんて書いてあります。

すっかり嬉しくなったうさぎは鈴の紐を引っ張ってみました。

ちり、ちり、ちり…

すると家の中からこんな声が聞こえてきました。

「とびらのすずをならすのは、だれ?」

きれいな、優しい声でした。


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厳しい寒さが続くと、暖かい春が待ち遠しいのは人間も動物も植物も
おんなじなんですね。

動物たちが雪の下に眠っている花や草の種たちを励ます歌を歌ってるなんて、
私も仲間に入れてもらいたくなりました。

もう雪はとけるよ、陽射しもやわらかくなってきたよって、
凍えそうな種に歌声で元気を届けたくなりました。

日本には四季があって、春夏秋冬、どの季節も大切なときです。

でも、私は寒い季節が苦手なので早く春が来ないかなって思ってしまいます。

あと十日ほどで春分の日です。

眠っていた植物の種が芽を出すのも、もうすぐです。

suu










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[ 2019/03/10 00:00 ] お話「さ行」 | TB(-) | CM(0)
プロフィール

すきっぷ

Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。

*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


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