童話作家 安房直子さんが遺した景色

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さっきは赤かぶをありがとうございました。『みどりのはしご』


みどりのはしご


☆あらすじ☆

小さな小さな庭の真ん中に、大きな大きなモチノキがある家に、
そのおばあさんは住んでいました。

近所の人は木を見ては、切っておしまいなさいと言うのですが、
おばあさんにはそんな可愛そうなことはできませんでした。
おばあさんはその木がとても好きなのです。

冬が終わると、おばあさんは木の下に小さな畑を作りました。
そして、赤かぶの種を十粒蒔きました。

すくすく育った赤かぶはやがて食べごろになりました。

そんなある朝、おばあさんがかぶの数を数えてビックリ!
たしかに十本あったはずなのに、九本しかありません。

「あれまあ、いったい誰が一本取ったんだろう。」

しばらくすると電話がかかってきて、その相手はこんなことを言いました。

「もしもし、おばあさん、さっきは赤かぶをありがとうございました。
これからサラダを作りますから、どうぞ食べに来てください。
モチノキのはしごをずうっと登ってきてください。」



mmmc



大切に育ててきたおかげで、すくすく育った赤かぶ

食べごろになってサラダにしようと楽しみにしていたのに、
断りもなしに採っていくなんて。

もし私だったら
「差し上げたつもりはありませんけど?!
ありがとうの前にごめんなさいでしょ?」
なんて、チクリと嫌味の一つでも言いたくなると思います。
しかも、木に掛けられたハシゴを登ってきてくださいですって?!

外に出て木を見ると、確かに細いハシゴが掛かっています。
そして、おばあさんはハシゴをどんどん登って行くのです。

ただののんびり屋でお人好しな人だと思っていたけど、
結構大胆で好奇心旺盛でポジティブなのでした。

きっと、赤かぶを取られたことなどもうすっかり気にしてないのでしょうね。

挿絵も綺麗で、柔らかい色使いが青葉の爽やかな季節に合っていて、
清々しい緑とおばあさんの表情に優しい気持ちになりました。


akkk





「令和」の時代が始まりました。
今朝は昨日の雨が上がって、天気も良く清々しい一日の始まりでした。
これからどんな時代になるのか、どうぞ宜しくお願いいたします。


greee







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[ 2019/05/01 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)

味の小人がくれた魔法と大切な約束『魔法をかけられた舌』


魔法をかけられた舌

☆あらすじ☆

突然の不幸で父さんのレストランを受け継いだ洋吉。
怠け者だった洋吉は評判だった父の味の秘密を知ることなく
ひとりぼっちになってしまいました。

「何もかもおしまいだ」そう思った時、
コックの身なりをした小人が立っていました。

それは食料品の倉庫になっている、地下室の番人をしている小人でした。

店を売ってしまおうかという洋吉に、たった一つ大切な約束を守ってくれるならと、
とびきりの魔法をかけてくれたのです。

小人がくれた魔法、それは失意の中にいた洋吉にとって希望の光でした。
これからは真面目に一所懸命に料理の勉強をして、
父さんが遺してくれたレストランを守っていくと誓ったはずでした。

しかし、魔法のおかげでいとも簡単に欲しいモノを手に入れてしまうと
父さんが遺してくれた味も、小人との大切な約束もすっかり忘れてしまったのです。

shop1.jpg



洋吉は、努力をしなくても思い通りにいってしまったために、
大切な小人との約束を忘れてしまいました。

もしかすると小人はこうなることが分かっていたのかもしれません。

三十年も食料品の倉庫になっている地下室の番人をやっていて、
そのご褒美にごちそうにもありついていたというのですから、
あまりに違いすぎる父親と息子のことも分かっていたのでしょう。

それでも、この店の味が消えてしまうのは惜しいと、
洋吉に望みを託したのだと思います。

欲しいものが簡単に手に入ったとき、人は自分の実力を錯覚して
傲慢になっていきます。

大切な約束も忠告も、都合の良いように無かったことになっていきます。

でもそんなごまかしは、いつかは消えていくでしょう。

いつか、心の底から手に入れたいものが出来て、
それが手に入らなかったときに今までの過ちに気づくのだと思います。

そして洋吉も、自分の過ちに気づいたとき、辛抱強く待っていてくれた小人に
謝罪と感謝の言葉を口にします。

小人は洋吉を責めるようなことを言いませんでした。

「ずいぶん待ちましたよ」
その言葉だけで小人の気持ちが痛いほど伝わってきました。

父親と小人が残してくれた大きな愛に気づいて、
洋吉は変わっていくでしょう。

地下室から調理場へと階段を上っていく姿に清々しい思いがしました。




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[ 2019/03/13 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)

菊酒つくりの小人家族とある夫婦のお話『ハンカチの上の花畑』


ハンカチの上の花畑

☆あらすじ☆

郵便屋さんが「きく屋」と言う酒倉に手紙を届けにきました。
以前は大きな造り酒屋でしたが、戦争でいくつもあった酒倉は焼け、
家族も店員もいなくなり潰れてしまったのです。
そんなたった一つ残った酒倉に手紙が届いたのです。

もう誰もいないと思われた酒倉にはおばあさんがいました。
息子からの便りを待ち焦がれていたというおばあさんは
手紙のお礼にとっておきのお酒をご馳走すると郵便屋さんを酒倉に招き入れました。

奥から持ってきた壺を大事そうにテーブルに置くと、
これがとっておきの菊酒だというのです。
「この世に二つとないお酒なんです。」
おばあさんは壺の横に白いレースのついたハンカチを広げて
こんな歌を歌いました。

♪出ておいで出ておいで 菊酒つくりの小人さん

すると壺の中から細い縄梯子がするすると出て来て、
小さな人たちが梯子から降りてきたのです。
それは菊酒の精でした。


kigiku.jpg


正直者の郵便屋さんはおばあさんから菊酒の壺を預かることになりました。
たった二つの約束事は守るようにと念を押されて。

郵便屋さんはこのあと様々な幸運を手にすることになるのです。
楽しい日々の中で秘密の約束はだんだんと破られていくようになり、
郵便屋さん夫婦の罪悪感も薄れていってしまうようでした。

nihonshu.jpg


この夫婦は欲に目がくらんで正常な判断が出来なかったのでしょうか。
それとも、この菊酒が本性を露呈させるきっかけだったのでしょうか。

これは誰にでも陥る可能性があることだと思いました。
いつの間にか「大事なこと」よりも「楽しいことや得すること」のほうに
心が奪われて誤っていくことに気づかないで過ごしているのかもしれません。




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[ 2015/08/30 00:00 ] お話「は行」 | TB(-) | CM(0)
プロフィール

青と緑璃

Author:青と緑璃
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」改め「青と緑璃」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに



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