童話作家 安房直子さんが遺した景色

安房直子さんの作品を紹介しています。
童話作家 安房直子さんが遺した景色 TOP  >  安房直子

テーブルが森の一本の木だったとき『白樺のテーブル』


白樺のテーブル


☆あらすじ☆

ぼくの部屋に、白樺で出来た小さなテーブルがあります。
白くて細い枝を組み合わせて作った可愛らしいテーブルです。

友人がぼくの引越し祝いにと、民芸品の店で見つけて贈ってくれたものです。

「こんなコンクリートの壁に囲まれて暮らすんだから、
せめてテーブルくらい素朴なのを使って、森に行ったつもりになるといいよ。」
そう言って、これを置いていったのでした。

はじめこそ、仕事の合間に一服したり、コーヒーを飲んだりする時に
使っていたのですが、忙しくなるとテーブルを使うのが面倒になり、
いつしか、部屋の隅に追いやられ、物置台になっていきました。

ある日のこと、部屋に妙なお客がやってきました。
ひょろりとした若いで、緑色の服はびしょ濡れでした。

「おたくに木の枝でこしらえた白いかわいいテーブルがないでしょうか」

「ああ、あれのこと?」ぼくはホコリが積もった物置台を指さしました。



sisisisisisisisis




自分が一番大事にしていた木が切り倒されて、テーブルになって、
そのテーブルが重い重いと泣いている夢を見るという不思議な

まだ、テーブルが森の中の一本の木だったときの幸せな思い出を
は知っているのです。
ある日突然、森の木々が切り倒されて、何もない空き地になってしまったことも。


物語に漂う、深い森の中の、静かで淋しい空気感や、森のの哀しさが
味戸ケイコさんの絵ですんなりと引き込まれていきました。







関連記事
[ 2020/05/08 00:00 ] お話「さ行」 | TB(-) | CM(0)

木漏れ陽編みのレース『丘の上の小さな家』


丘の上の小さな家


☆あらすじ☆

丘の上に赤いえんとつのついた小さな家がありました。
その家には、お母さんとかわいい少女「かなちゃん」が住んでいました。

かなちゃんはいつも、ベランダの椅子に座ってレースを編んでいました。
細い銀の針で、真っ白い糸をすくい取りながら、
いつか自分が花嫁さんになる日のためのベールを編んでいるのです。

かなちゃんが十三歳になったある日のこと、
ベランダの柱にいる大きなクモに声をかけられました。

「あなたのレースと、ぼくのレースと、どちらが素敵でしょう。」

そこには見事なクモの巣が出来ていました。
クモのレースは美しい銀色で細かく編まれていて、
所々に昨夜の雨のしずくがビーズをはめたみたいに虹色に光っています。

「どうやって編むの?」

憧れでいっぱいの目でかなちゃんが尋ねると、
クモは「レース学院へおいでなさい」と言うのでした。

レース学院に行ったかなちゃんは難しい編み方をびっくりするほどの早さで覚え、
卒業証書と、レースの布と針、ビーズを持って家路につきました。

かなちゃんは「ほんの数時間」のつもりでした。
素敵なクモレース編みを覚えたくてちょっとのぞくだけのつもりでした。

それなのに、家に帰ってみると、帰りを待っていたのは一匹のだけでした。



lllllrrrrssss




物語はじめは、絵に書いたような家と優雅にレース編みをする少女
優しいお母さんの日常が描かれています。
そして、クモに声をかけられてから少女の時間が不思議な世界へと
吸い込まれていきます。
ほんのちょっとだけのつもりで好きなことをして家に戻ってくると、
現実の世界は一変していました。

と、普通ならここで終わりそうなお話なのですが、
の手助けもあり、身につけたレース編みが生計を支えることになります。
それは森の中の木漏れ陽のようにきらめいて、はかなげな不思議なレースです。

レース編みをしているときは、ただ一心に、編むことだけに集中していられます。
悲しい気持ちも、その時だけは忘れられるのです。

かなちゃんが前向きになれたのは、帰りを待っていたのおかげかもしれません。
この、今までのかなちゃんを責めもせず、叱咤激励が上手なのです。
そして、話し相手のみならず、電話の番や料理までしてくれる有能な

人生を変えてしまった趣味が、生きる支えになることもあるのかもしれません。
過ぎたことを考えて悲しんでいても仕方がないのです。

前向きになれたり、時々悲しみが押し寄せてきたり。
それでも、心が喜ぶことを見つけて、生きていかなくてはいけないんだなと
気づかせてくれるお話です。








関連記事
[ 2020/05/07 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(0)

不思議な砂場と海の猫『ふしぎなシャベル』


ふしぎなシャベル


☆あらすじ☆

ベンチで編み物をしていたおばあさんは公園の砂場で
置き忘れられているシャベルを見つけました。

銀色で柄には波の模様がついています。

「まあ、こんな綺麗なシャベルは見たことがないわ。
生きのいいお魚みたいじゃないの。」

シャベルを拾い上げて、砂場の砂をすくってみました。
すくった砂はさらさらととてもいい感じにシャベルからこぼれます。

おばあさんは嬉しくなって、せっせと穴を掘り始めました。
夢中でどんどん深く掘っていくと砂場の砂はだんだんしっとりと濡れてきて、
その濡れた砂には白い貝がらが混じっています。
そして、掘った穴からこぽこぽと水が湧いてきました。

湧き出た水は砂場に溢れ、気がつくとおばあさんは海にいたのです。

公園のベンチもぶらんこも、ポプラの木もありません。
見渡す限りの砂浜と青い海。
おばあさんは波打ち際の砂をせっせと掘っていたのです。



nenenekkkkkk



海でおばあさんは一匹のと出会います。
麦わら帽子をかぶったそのは、なんと魚をとる網を編んでいるのです。

それでおばあさんに「あんたも手伝ってくださいよ」なんて言うのです。

これ、おばあさんが編み物出来ること知っていて言ってるんでしょうね。
それとも、編むのを手伝わせるためにわざとおばあさんを連れてきたのかも。

読んでいて「私には無理だわ」って声に出してしまいました。
ちぐはぐな網目を見て呆れるが想像できます。


潮風が気持ちいい海、そして、とれたての生きのいい魚。

柄に波の模様がついた銀色のシャベルが連れて行ってくれた
不思議な海辺のの町。

おばあさんとのやりとりが面白くて、楽しく読み終えたお話でした。







関連記事
[ 2020/05/06 00:00 ] お話「は行」 | TB(-) | CM(0)

たったひとつの嫁入り道具『木の葉の魚』


木の葉の魚


☆あらすじ☆

アイは貧しい漁師のでした。
財産は何一つ無く、借り物の小舟が一そう、借り物の網が一枚あるだけ。
そして子供が十人もいるのに、父親は病気ばかりしているといった具合です。

一番上ののアイがお嫁にやらなくてはならない年頃になったとき、
遠い村から時々やって来るばあさんが山番をしている息子の嫁に
アイを欲しいと言って来たのです。

アイが村を離れる前の晩、親は古いを一つ出してきてこう言いました。

「これがお前のたったひとつの嫁入り道具だよ。
汚いだけれど、これひとつがお前を幸せにするからね」

このに山の木の葉を入れて、蓋をしてからちょっと揺するだけで
とびきり美味しい焼きが出来る不思議ななのです。

それは親の祈りがこもっているでした。
アイが幸せになるように百日、海の神様にお願いしてもらったものなのです。



sasassss




親がアイにを渡したとき、やたらにこの鍋を使わないよう忠告をしました。

使うのは嫁入りした日と、本当に大事な時だけ。

木の葉が焼きに変わるとき、海のが同じ数だけ死んでくれるという言葉に、
ドキリとしました。

普段、や肉を食べるときそんな事を考えるでしょうか。
生命を頂いている…言われてみれば、それはそうなのですが、
それを考えながら食卓に上がったや肉を見たら、
なんだか箸をつけられなさそうです。

作中に”海の魚は山の木の葉と同じ”という言葉があります。
それは取っても取っても無くならないもの。
限りある生命として見ていない証拠です。

こんなふうに突きつけられると、ずいぶん私はいろんなものに目を背けて
生きているんだなと思わされます。
悪気が無くても、無意識のうちに感謝する気持ちを忘れているのです。

最後の一行。
”アイの親のやさしい声が、おいで、おいでと呼んでいます。
もうすぐ、もうすぐなのです”

私には、なんだか背筋が寒くなる一行でした。







関連記事
[ 2020/05/04 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

おじいさんと少女の安らぎの場所『花の家』


花の家


☆あらすじ☆

ある大きな町の真ん中に、大きなお屋敷がありました。
お屋敷の周りには、一巡りするのに十五分もかかるほどの長い塀、
塀の中には木立ちがうっそうと生い茂っていました。

厳しい鉄の扉をくぐり、どこまでも続く白い飛び石の突き当りに、
やっと家の灯りが見えるのです。
その家には、もうすぐ百歳に手が届きそうなおじいさんと、
やっと十六歳になったばかりのお手伝いの少女が住んでいました。

あんまり長生きしたせいでおじいさんの家族は先に亡くなってしまい、
身寄りはこの世に一人もいないというのがおじいさんの口癖でした。

少女は大変な働き者でおじいさんの世話はもちろん、
広い家の掃除から庭の手入れまで一人でしました。

庭にはたくさんの木とがありました。
ある日のこと、おじいさんはこんな事を言いました。

「私はこの庭に黄金をどっさり埋めておいたよ。
…私が死んだらそれをみんな、あんたにあげよう」



sususuiiiii




裕福でも…裕福だからこそ、人の嫌な部分を色々見てきたであろうおじいさんと、
身寄りがなく孤独に耐えてきたことが垣間見える少女

二人の楽しみは、縁側に座ってたちや庭にやってくる蝶を眺めること。
時間が止まって、どこか例えようもなく美しい別の世界にこもっているような
そんな気分になるのです。

穏やかな日々でしたが、二人に別れのときがやってきました。
おじいさんが残してくれたもの、それはお金に代えがたいものでした。

少女は黄金を見つけたとき、喜びでいっぱいになりました。
懐かしい両親にやっと出会えたような思いに満たされました。

ずっと一緒に、庭の木やを大切にしてきたからこそ、
たった一人、生きていかなくてはならない少女に必要なものが、
おじいさんには分かっていたのでしょう。







関連記事
[ 2020/04/30 00:00 ] お話「は行」 | TB(-) | CM(0)

ひみつ ひみつ 誰にも言えない『うさぎ屋のひみつ』


うさぎ屋のひみつ


☆あらすじ☆

キャベツ畑の隣の小さい家に住んでいる若い奥さん
可愛らしくて気立てが良いのですが、大変な怠け者なのです。

家のことすべてが面倒で、朝旦那さんが家を出てしまうと、
日がな一日、窓のそばで椅子に腰掛けてレースを編んだり、
本を読んだり、一面のキャベツ畑をぼんやり眺めていたりするのです。

そして、夕方になるとため息を付いて
「あああ、今夜のおかずは何にしよう…」とつぶやくのです。

ある夕方のこと、窓のそばでやっぱりため息をついていると、
外でいきなり変な声がしました。

奥さん、今夜の夕食、お届けしますよ。」

外を見ると、そこには白いデニムのエプロンをかけたうさぎが立っていました。
そして、”夕食宅配サービス うさぎ屋”と書かれた名刺を差し出したのです。



rourouuuu




うさぎ屋のメニューには見ているだけでヨダレが出そうなほど
美味しそうな料理が並んでいました。

買い物も行かず、洗い物も無く、ただ待っているだけで一流の料理
食べられるのですから怠け者の奥さんには願ってもない話です。

でもね…、最近ふと思うのです。
家事や仕事で忙しい人や、なんにもやりたくないっていう怠け者だけが
夕食作るのしんどくて、うさぎ屋を利用するのでしょうか?

きっと毎日毎日、来る日も来る日も食事を作り続けている人は
時々、作るのが嫌になって、たまには誰かに作ってもらいたいよって
思うこともあるのではないでしょうか。

うさぎ屋の会費は月初めにアクセサリーを一つと交換で
ひと月の間、美味しい夕食が運ばれてくるのです。
これだったら、ちょっと試しに一ヶ月お願いしたくなります。

それにしても、欲というのは際限無いなとつくづく思いました。

そして、なんだかんだあっても、みんなたくましく生きているんだなと、
思わず笑ってしまったラストでした。


ccccchhho








関連記事
[ 2020/04/29 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(0)

片目の黒猫と三日月村の秘密『三日月村の黒猫』


三日月村の黒猫


☆あらすじ☆

山本洋服店の息子、さちおが初めてその猫に会ったのはある夏の夕暮れ時、
西の空に細い三日月がかかり始めた時刻でした。

さちおの家はたくさんの借金を抱えて、今日倒産したのです。
家は表通りの大きな仕立て屋でした。
三代も続いた老舗を三代目のおさんが潰してしまったのです。

今朝、店を立て直すお金を工面するためにしばらく帰れないと言い残して
さんは青い顔で、ふらりと出掛けていきました。

それから、長いこと店の前にうずくまっていたさちおに
優しく声をかける者がいました。

「あなたを助けに来ましたよ。」

その声の主は、大きな黒猫でした。
片方だけ金色の目がきらりと光る、片目の黒猫が一匹、
さちおの横にのっそりと立っていたのです。

それは亡くなった方の三日月村に住むおばあさんから頼まれてやってきた
召使いの黒猫でした。

黒猫はつかつかと店の中に入っていきました.
そして、あとを追うさちおにこう言ったのです。

「さあ、しばらくの間、私と一緒に暮らしましょう。
山本洋服店を一緒にやっていきましょう。」


mimikkkkkkk




さちおと黒猫が出会った場面は不気味なはずなのに、
三日月がのぼる夜だとなんだか神秘的です。

ボタンを手に入れるために三日月村に行く道のりや
りすたちがボタンを作る場面は想像するのが楽しかったです。

その反面、三日月村の正体やおばあさんやおさんの想い、
「おさんでもあるし、おばあさんでもあるんだよ。
私の中にお前のおさんがいるんだよ。」
というおばあさんの言葉に考えさせられたりもしました。

場面が目まぐるしく変わる幻想的なお話なのですが、
司修さんの絵が加わると、アドベンチャー的な要素も感じられました。

読むたびに印象が変わる、何度も読み返してきた作品です。







関連記事
[ 2020/04/26 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)

カエルの発電所『秘密の発電所』


秘密の発電所


☆あらすじ☆

この間、急ぎの仕立物を届けた帰りでのこと、
日が暮れた峠の道で帰り道が分からなくなりました。

すると、いきなりあたりの百合が光りだしたのです。
はじめはついたり消えたりしながら、いつしか白く眩しくなりました。
まるで、お祭りの晩みたいです。

これはきっと、きつねのいたずらに違いないと思いました。
気味が悪いので、前を向いてさっさ、さっさと歩いていきました。

「もしもし、おばさん」

草の中から壊れたラッパがいきなり鳴るような感じで誰かに呼ばれたので、
飛び上がるほど驚いて、すっかり気味が悪くなりました。

私は口をぎゅっと結んで知らんふりして歩いていきました。

「おばさん、ちょっと待ってください。」

私が駆け出そうとしますと、その声ははっきりとこう言いました。

「せっかく電気をつけて道を照らしてあげたのに、
こっちの話も聞かないで、あんたは薄情者ですねえ。」

そこまで言われて知らんふりも出来ません。
私が足を止めると、そこに飛び出してきたのは一匹の大きなカエルでした。



ririyuyu




カエルが自分で作った自慢の発電装置を説明している場面が
自信たっぷりで面白いのです。
こんな立派な装置を作ったら自慢げに言いたくなる気持ちも分かります。

百合の花に灯りをともすためにマヤカシではなくて
水車を作って水力発電で灯りをともしている。

安房さんの作品に出てくる人間以外の生き物の多くは
人間以上に堅実でコツコツと健気に生活しているような気がします。

だから変に人間を嫌うこともなく、対等な言葉遣いと意見を持って
人間に歩み寄っているように思います。





関連記事
[ 2020/04/25 00:00 ] お話「は行」 | TB(-) | CM(0)

おはじき三つと、あなたの心『星のおはじき』


星のおはじき


☆あらすじ☆

あの朝、あやちゃんが学校に持ってきたたくさんのおはじきを机の上に出すと、
女の子たちが集まってきて、おはじきに触ったり手のひらに乗せたりしていました。

私も、みんなの真似をしておはじきに触ろうとすると、
あやちゃんはいきなり、「さわらないで!」と言いました。
そして、顔をしかめて、とても嫌そうに、
「あなたが触ると、汚れるわ」と言いました。

私は心の中が、すうっと青くなるような気がしました。
指先が、凍ってゆくような気がしました。

その次の国語の時間は、先生の声が全然耳に入りませんでした。
給食も、美味しくありませんでした。

昼休みに図書室から教室へ戻ると誰もいませんでした。
私も校庭へ出ようと思ったとき、あやちゃんの机の上に置き忘れられた
赤い袋を見つけたのです。


jikijikiii




家の窓から大きなの木が見える川のほとりの古い家に
おばあちゃんと二人で暮らしている女の子
目が悪いおばあちゃんは、女の子が幼いとき身だしなみを
きちんとしてくれることが出来ませんでした。
服が汚れていたり、髪が乱れていたことで悪口を言われるようになりました。

今では自分の身の回りのことはきちんと出来るようになりましたが、
それでもまだ友達は汚い汚いと言っているのです。

悪口には負けない、いつも明るく生きていたいと思う女の子ですが、
それはずいぶん難しいことだとも思うのです。

文中に何度か、「難しい」という言葉が出てきます。
「出来ない」というよりも「難しい」ということで、女の子の辛さや葛藤が
強く現れているように感じました。

「幸せな人は他人に意地悪をしない」なんてことを聞いたことがありますが、
そのとおりだと思う反面、自分はどうだろうかと思って苦しくなるときがあります。

自分より劣っている人や貧しい人を見て安心する気持ちが少なからずあるからです。

なんと説明したらいいのか、うまく言葉にできないのですが、
私にとってとても心に突き刺さる作品です。

yyyyyyyyy







関連記事
[ 2020/04/24 00:00 ] お話「は行」 | TB(-) | CM(0)

歯医者さんへのお礼です『ねずみのつくったあさごはん』


ねずみのつくったあさごはん


☆あらすじ☆

小さな町に小さな歯医者さんがありました。
若くて腕の良い歯医者さんがたった一人で働いていました。

ある日曜日、小さな患者さんが来ました。

「せんせい、お願いします。」

それは一匹のねずみでした。
玄関に飛び込むと、さっさと診療室の方へ歩き出しました。

今日は日曜日でお休みです。
そんなことはお構いなしに、ねずみはさっさと診療室の椅子によじ登って
ぱくっと口を開けたのです。

それを見ると歯医者さんはいつもの癖で思わず、
「虫歯ですか。」
と聞いてしまいました。


assssssa



休診日にいきなり来て、虫歯を看てくださいなんて、随分図々しいと思ったのですが
ねずみには虫歯をすぐに治してもらいたい理由があったようです。

そのお礼に、歯医者さんにこしらえた朝ごはん
独り身の歯医者さんにはピッタリのお礼だったと思います。

かまどで炊いたご飯にお味噌汁、厚焼き卵に煮付け、胡麻和えなど。

「素晴らしい朝ごはんだ」と嬉しくてたまらない歯医者さん。

わたしも、ねずみたちが朝ごはんを作る様子を読んでいたら
歯医者さんが羨ましくなってしまいました。





関連記事
[ 2020/04/23 00:00 ] お話「な行」 | TB(-) | CM(0)

せんせい、早く「ひみつ」を取り出して下さい!『鳥』




☆あらすじ☆

夏の夕方、腕が良いと評判ののお医者さんの診療所に
一人の少女がかけこんで来ました。

聞いてはいけなかった「ひみつ」を
日が沈むまでに大急ぎでとって欲しいというのです。

その秘密とは少女が好きになった少年は
実は魔法をかけた赤い海藻の実を食べて人間になったで、
その秘密を誰かが知ってしまったら
日が沈むと少年はに戻ってしまうのです。

少年に実を食べさせた魔法使いは少女に言いました。
「あんたが話を忘れられるか、腕のいいのお医者
ひみつを取ってもらえたら話は別だけどね」と。

だから少女にコトンッと落ちてしまった「ひみつ」を
取り出してもらおうと慌ててやってきたのです

少女の話を聞いての中を覗くと、確かに何か光るものが見えたのです。
それは白い一輪の花のようでもありました。


kamome.jpg



少女と少年の悲恋と思いきや、最後に素敵な秘密が少女に用意されていました。
私は安房さんのこういうさりげない優しさが好きです。

私が一番惹かれたのは「のお医者さん」でした。
「秘密を取ってください」なんていう突拍子もない少女の話。
バカにせず、真剣に向き合ってくれたから、
少女のの中の秘密にも気づいてあげられたのだと思います。

そして、少女が去ったあとの思いがけない素敵な真実。
それを少女に知らせるためにお医者さんは外へ飛び出していきます。

「教えてやらなきゃいけない!」
そうさけぶと、お医者さんはそとへとびだしました。
夕暮れの道を、いちもくさんに走りました。
少女の耳の中に、もうひとつの、すてきなひみつをいれてあげるために
一心に、追いかけていきました。


私は、この最後の追いかけていくくだりが一番好きです。
私だったらたった一度きり会った人のために
こんなふうに真剣に向き合えるだろうかと思うと、
医者さんの優しさが溢れているような気がして
いつもこの場面で泣いてしまいます。




関連記事
[ 2020/04/20 00:00 ] お話「た行」 | TB(-) | CM(0)

安房直子さんのこと


安房直子さん

私が安房直子さんを知ったのはこちらにも書いているように中学生の時でした。

でも、あとになって小学生の時、学校の図書室で『北風のわすれたハンカチ』や
天の鹿』なんかを読んでいたことに気づいたのです。

今では安房直子さんの作品は、学校教材で取り上げられることが多いようですので
物語は知ってるけど…誰だっけ?っというかたも多いのではないでしょうか。

このブログを訪問して下さったかたは、「安房直子」で検索していらして下さったかたが多いかと思いますが、あんまり知らないなというかたのために、ちょっと簡単にご紹介させていただきます。


安房直子プロフィール>

1943年1月5日、東京都生まれ。
引越しが多く小中学校と転校が続き、内向的な性格もあってか
外で遊ぶよりも一人で空想したり、本を読むのが好きだったそうです。
影響をうけたのはグリム童話やアンデルセン童話。

日本女子大学国文科在学中に児童文学のレポート代わりに『空色のゆりいす』を書き、それが『目白児童文学』という児童学科の雑誌に掲載され、童話の道に本気で進みたいと思うようになったようです。

そして『目白児童文学』や講座仲間と作った同人誌『海賊』に作品を発表していき、
その中の作品『さんしょっ子』は第3回日本児童文学者協会新人賞を受賞。

1971年に初めての著書『まほうをかけられた舌』、そして『北風のわすれたハンカチ』を刊行。

代表作は、『きつねの窓』『北風のわすれたハンカチ』『うさぎのくれたバレエシューズ』『ハンカチの上の花畑』など多数。

1993年2月25日、肺炎のため逝去される。享年50歳。
『花豆の煮えるまで-小夜の物語』を連作形式で執筆。
小夜の物語『大きな朴の木』はやはり次の展開を予想させるような終わり方だと思います。
きっと、安房さんがご存命なら、この続きがあったのかもしれません。

rindou.jpg
青色が好きでお花も青系のものを好んでいらしたようです。


【各受賞作品】
『さんしょっ子』第3回日本児童文学者協会新人賞
『風と木の歌』第22回小学館文学賞
『遠い野ばらの村』第20回野間児童文芸賞
『山の童話-風のローラースケート』第3回新美南吉児童文学賞
『花豆の煮えるまで-小夜の物語』第2回ひろすけ童話賞、赤い鳥文学賞特別賞

※『安房直子コレクション』より引用させていただきました。




プロフィール

すきっぷ

Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに



良かったらポチッと押してください↓

ブログランキング・にほんブログ村へ

最新コメント
タグ