童話作家 安房直子さんが遺した景色

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胸の中のかまどが真っ赤に燃えている女の子のお話『わるくちのすきな女の子』

わるくちのすきな女の子

☆あらすじ☆

人の悪口を言うのも、人にいじわるをするのも好きな女の子がいました。

この女の子は咲きたての花のような綺麗な顔をして、頭も良くて、遊びも上手でした。
ゴム飛びも一番高く飛べる女の子に友達は憧れて集まってくるのです。
そして、女の子はその中でいつも一番威張っていました。

ゴムとびが下手な友達を仲間外れにしようと言った時も、ほかの友達は同調していきました。

ある日のこと、灰色のボロボロの服を着たみすぼらしいおばあさんから、虹のように美しいゴムひもを借りてゴムとびをしてみると、見えるはずのない遠くの海が見えたのでした。

「見えたわ。」

思わず手を叩こうとすると、女の子の両手は灰色のつばさでした。

女の子は小さな灰色の鳥になって、今、公園の上に浮かんでいるのです。

kageee



★★★★★★★★★★



灰色の鳥の姿になった女の子は魔法をかけたおばあさんを探しに飛び出します。
町中を探し回り、ずっと遠くの山々を越えていきます。

その先々で出会った花やきつねにも悪口を浴びせかける女の子。
そして、女の子は「わるくち鳥」と木や草花、森の動物たちから噂されるようになります。

女の子自身も分かっていました。
胸の中に真っ黒いかまどがあって、ゴーゴーと音をたてて真っ赤に燃えあがると、悪口があとからあとから沸いてきて、誰かに浴びせかけると何とも言えない良い気持ちになることを。

自分でもどうにも出来ないと思っていた激しい意地悪な炎は、人間に戻りたいという強い気持ちで出会ったさまざまな存在との交流のなかで変化していきます。
今まで悪い方向に動いていた強固な気持ちが、根気強くて勇気のある子だと言われた瞬間は、読んでいて何故か私も肩のチカラが抜けていくような気がしました。


最後に、物語の中で特に印象的で、鼻の奥がツンと苦しくなった台詞を記しておきます。

「あの二人は、きっと幸せに生きてゆくよ。底抜けのお人好しの上には、幸運の星がついているんだよ。」


happyyyy

※星と言っているのに、何故かこんな青空が頭に浮かんだので。






[ 2022/01/23 00:00 ] お話「わ行」 | TB(-) | CM(-)

おはじき三つと、あなたの心『星のおはじき』


星のおはじき


☆あらすじ☆

あの朝、あやちゃんが学校に持ってきたたくさんのおはじきを机の上に出すと、
女の子たちが集まってきて、おはじきに触ったり手のひらに乗せたりしていました。

私も、みんなの真似をしておはじきに触ろうとすると、
あやちゃんはいきなり、「さわらないで!」と言いました。
そして、顔をしかめて、とても嫌そうに、
「あなたが触ると、汚れるわ」と言いました。

私は心の中が、すうっと青くなるような気がしました。
指先が、凍ってゆくような気がしました。

その次の国語の時間は、先生の声が全然耳に入りませんでした。
給食も、美味しくありませんでした。

昼休みに図書室から教室へ戻ると誰もいませんでした。
私も校庭へ出ようと思ったとき、あやちゃんの机の上に置き忘れられた
赤い袋を見つけたのです。


jikijikiii




家の窓から大きなの木が見える川のほとりの古い家に
おばあちゃんと二人で暮らしている女の子
目が悪いおばあちゃんは、女の子が幼いとき身だしなみを
きちんとしてくれることが出来ませんでした。
服が汚れていたり、髪が乱れていたことで悪口を言われるようになりました。

今では自分の身の回りのことはきちんと出来るようになりましたが、
それでもまだ友達は汚い汚いと言っているのです。

悪口には負けない、いつも明るく生きていたいと思う女の子ですが、
それはずいぶん難しいことだとも思うのです。

文中に何度か、「難しい」という言葉が出てきます。
「出来ない」というよりも「難しい」ということで、女の子の辛さや葛藤が
強く現れているように感じました。

「幸せな人は他人に意地悪をしない」なんてことを聞いたことがありますが、
そのとおりだと思う反面、自分はどうだろうかと思って苦しくなるときがあります。

自分より劣っている人や貧しい人を見て安心する気持ちが少なからずあるからです。

なんと説明したらいいのか、うまく言葉にできないのですが、
私にとってとても心に突き刺さる作品です。

yyyyyyyyy







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[ 2020/04/24 00:00 ] お話「は行」 | TB(-) | CM(0)

もうすぐ一年生『うさぎの学校』


うさぎの学校


☆あらすじ☆

まり子はランドセルを買ってもらいました。
赤いピカピカのランドセルです。
ランドセルにノートやえんぴつを入れて毎日学校へ行く練習をしています。

「おかあさん、いってまいりまあす」

「はあい、いってらっしゃい。気をつけて」

お母さんはいつも楽しそうに笑って送ってくれます。

まり子は近くの野原を一周りして、また「ただいまー」と帰ってくるのです。


ある日の事、原っぱの桜の木のあたりで不思議な声を聞きました。

「おかあさん、いってまいりまあす」

「はあい、いってらっしゃい。気をつけて」

まり子はびっくりしました。
誰?私とおんなじこと言ってる ひと…。



ranran



私の小学生の時代にはランドセルの色は赤と黒しかなくて、
当たり前のように女の子は赤、男の子は黒を背負って学校に行っていました。

今はいろんな色があってカラフル、好きな色を選べるのが羨ましいです。

赤が嫌だったわけでも、黒のほうが良いと思ったこともありませんし、
他の色があったらなと思ったこともありませんでしたが、
色を選択できる現実を目の当たりにすると、なんだか急に羨ましくなります。

今ではデパートでも売ってるし、テレビのCMなどでも目にすることはあるので
カラフルなランドセルにいまさら驚くこともないのですけれど。

でも、大人になって道で色とりどりのランドセルの小学生の列に出会うと、
いまだに嬉しくなって見てしまいます。
赤やピンクや紺や茶色のランドセル、自分が小学生だったらどれを選ぶかな?と。
空色のランドセルいいな~とか。


真新しい好きな色のランドセルを背負った新一年生に会えるのは
もうすぐですね。





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[ 2020/03/29 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(0)

さあ行こう!月がしずむまで、僕は自由だよ。『空にうかんだエレベーター』


空にうかんだエレベーター

☆あらすじ☆

大きな町の大通りにできた、子供服のお店。

綺麗に磨き上げられたショーウインドーには
セーターを着た大きなうさぎのぬいぐるみが飾られています。
そのうさぎは毎日ピアノを弾いていました。
そして、なぜかちょっと拗ねているようにも見えるのです。

毎日見に来る女の子「ともちゃん」はうさぎが大好きです。
じっとうさぎを見つめては、ピアノの音に耳を傾けます。
すると、本当にピアノの音が聞こえてくるのです。

ある日のこと、うさぎはこんな歌を歌っていました。

「満月の晩に、またあいましょう♬」


透き通った四角い箱に乗ってお月様に一番近いところまで…。

女の子とうさぎは月の光を浴びて夢のような時間を過ごしました。

でも、それは月が西の空にしずむまで。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうのでした。


kenban-piano.jpg



ショーウインドーに飾られているうさぎのピアノの音に気づいたのは
きっと、この女の子だけだったのかもしれません。

行き交う人たちは飾られている服ばかりに目がいって
ピアノの素敵なメロディに気づいてくれなかったから
うさぎはちょっと拗ねてしまったのかも。

そんなうさぎのピアノに真剣に耳をすませ褒めてくれた唯一の存在。

気づいて認めてくれたことが嬉しくて
女の子だけに満月の夜の魔法を教えてくれたのでしょう。

存在に気づいてくれて、認められること。

簡単なようでなかなか報われないのですが、
きっと、誰でもがそれを願っているのだと思うのです。

寒い季節に、心がふんわり暖かく感じる物語です。




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[ 2016/12/18 00:00 ] お話「さ行」 | TB(-) | CM(0)
プロフィール

青と緑璃

Author:青と緑璃
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」改め「青と緑璃」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに



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