童話作家 安房直子さんが遺した景色

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不思議な少女と出会った雪降る海沿いの町『海の雪』


海の雪

☆あらすじ☆

が降りしきる海沿いの町。
少年が一人、バスから降りてきました。

「海岸通り四丁目」
そうつぶやくと、少年はあたりを見回しましたが、道を訪ねようにも誰一人見当たりません。

少年は幼いときに別れた母親に会いにこの見知らぬ土地へ来たのです。
母はみなと屋という旅館に嫁いで、子供もいるということしか分かりません。
祖母のところに届いた手紙の住所を、もうそらで覚えていたつもりでした。

海沿いの道を歩き続けても、どこまで行けば目的の場所に着くのか見当もつきません。

も帽子も無い少年に降り続けるに、体は凍え疲れてきました。

に入らない?」

ふいに誰かの言葉と白いがふわりと差し掛けられたのです。


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このお話を読んだとき、思い浮かんだのが『マッチ売りの少女』でした。

寒く凍える夜、マッチを擦ると、もう亡くなってしまったおばあさんが現れ、少女を抱き天に昇っていくという最後。

幼少の頃は、ただ「かわいそう」という感情だけでした。
でも、大人になってから読み返すと、「あれで良かったんだ」という思いが湧き上がってきました。

海の雪」の少年を向こうの世界へ送り出さなかったのは、きっと帰る場所があったからなんだと思いました。

お母さんが恋しくて、寂しい思いをしてきたことでしょう。
でも、きっと帰りを待っていてくれる誰かがいるはず。
物理的、経済的だけじゃなく、精神的にも安心して帰れる場所。
だから、向こうの世界へ旅立たせなかったんだと思いたいのです。

お母さんを思って、探しに来た見知らぬ土地。

会えるかなと期待に胸を膨らませた思いが、徐々に不安に変わっていったとき、少年の折れそうな心をすくい上げ、癒やしてくれたのが少女の存在だったような気がします。

が降りしきる人気のない淋しい風景を思いましたが、少女と過ごした時間とラストに、少しの救いと暖かい気持ちがこみあげてきました。


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[ 2019/02/24 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(0)
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青と緑璃

Author:青と緑璃
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」改め「青と緑璃」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


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