童話作家 安房直子さんが遺した景色

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亀に魅入られた娘『日暮れの海のものがたり』


日暮れの海のものがたり


☆あらすじ☆

海のほとりの小さな村に縫い物の上手ながいました。
仕立て物をしている、いとばあさんと暮らしているさえと言う
どこの生まれで歳はいくつなのか、知っている者は誰もいません。

何年も前の夏の夕暮れ、いとばあさんのところにやってきたは、
追われているのでかくまってほしいと頼んだのです。

さえはこの村にたどり着く前に、大きな海との約束を破って
逃げてきたのでした。

病気で死ぬのを待つしかない好きな人を助けたいがために
の甲羅一枚と引き換えにそのと結婚するという約束を
してしまったのです。

しかし、好きな人には結婚を約束しているがいたのでした。
病気が治ったら一緒にどこかに逃げようと思っていたさえの淡い考えは
もろくも崩れ去ってしまったのです。

それからというもの夕暮れになると、さえの家の窓の下に海がやってきては
「約束忘れちゃいけないよ」と低い声でつぶやくのでした。



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追いかけられているの気持ちを思うと、どれほどの恐怖だったろうと思う反面、
裏切られたの哀しさに胸が苦しくなる思いがしました。
想う人を助けたい一心ではじめから守るつもりもない約束をしたけれど、
結局好きな人と添い遂げることが出来なかった

因果報応、当然の報い、そんな言葉が頭をよぎるのですが、
それは娘にも自分のした仕打ちに気づいていることでしょう。
それでも、と結婚という気持ちにはなれなかったのです。

いとばあさんと出会えて、娘は少し救われたかもしれないけれど、
最後まで娘と亀の哀しさや辛さが重苦しく残ったままで、
なんとも言いようのない気持ちになった物語でした。







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亀からもらった不思議な時間『だれも知らない時間』


『だれも知らない時間』

☆あらすじ☆

漁師の良太はおばあさんと二人暮らしの元気な若者。
貧乏だけれど毎日忙しくて、網にあいた小さい穴を繕う時間もないほど。
ある日、貧乏暇なしでやりきれないと嘆いていると、大きな亀と出会ったのです。

もう亀は二百年も生きていました。
それでも、あと百年も命が残っているのです。
最近では大きな体を動かすのがおっくうになって眠ってばかり、
見る夢も同じで飽き飽きしていました。

暇が欲しいという良太に亀は自分の時間を分けてあげるというのです。
コップ一杯のお酒と引き換えに。

そして良太は夜中の十二時からの一時間、
誰も知るはずのない秘密の時間を持ったのでした。


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お酒と引き換えに自分だけの時間を手にした若者。
そして、この物語にはもうひとり亀から時間をもらった少女がいました。
それは、もう本当に”賭け”と言うしかないものと引き換えにして。

誰かの時間を貰うってことは、命の時間を貰うことと同じ。
そのためには大きなリスクを伴うことも覚悟しないといけないこと。
時間をもらうなんてありえないことですけれどね。

生きるもの全てに平等にある二十四時間という一日。
全く足らないと思う人もいれば、有り余っていると感じる人もいるでしょう。
私といえば…きっと時間はあるはずなんだと思います。
使い方が下手なのか、効率が悪い動きをしてるのか、
なんだか何もしないで休日が終わってるなんてことがよくあります。
きっと、考えて動けば十分な時間なのかもしれません。

でも、「何をしていても誰にも知られない時間」なんてちょっと惹かれますね。





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プロフィール

青と緑璃

Author:青と緑璃
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」改め「青と緑璃」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに



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