童話作家 安房直子さんが遺した景色

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青い夢の海に溺れてしまった娘『夢の果て』


『夢の果て』


☆あらすじ☆

あるところに、とても美しい目をした娘がいました。
やっと十三歳でしたがその大きな目に見つめられるとあまりに眩しくて
誰もが思わず目を伏せてしまうのです。
そのくせ、またどうしてもその顔を見ずにはいられなくなるのです。

「あんたは、いい目をしてるねえ。」
大人は必ずそう言いました。

自分の目は誰が見ても美しいのだとはっきり知るようになった娘は、
高慢になっていきました。
そして、他の人が頑張って手に入れる幸せも、私がにっこり笑えば
簡単に転がり込んでくると考えるようになっていきました。

ある日のこと、娘は電車の中でこれまで見たことないほどの
素敵な目の人に出会いました。

その人のまぶたは青く、古い絵の中の謎めいた肖像のようでした。
若い女の人で、大きな白いトランクを持っていました。

向かい合った娘は、ながいこと女の人の青いまぶたに見とれていました。

すると、その女の人はにっこり笑って優しく言ったのです。
「お嬢さん、いかがでしょう。ドリーム化粧品のアイシャドウ。
今買ってもう少し大人になってからお使いになるといいわ。」

アイシャドウを買って家に帰った娘は大人になるまで待つことが出来ませんでした。
夜、こっそりとまぶたの上にアイシャドウをぼかしてみると、
自分の顔がにじんだ青い花のように見えてきました。

娘は来る日も来る日もアイシャドウをまぶたに塗って自分の目に見惚れては、
これから掴むさまざまな幸運を空想して、胸を踊らせました。

やがて、アイシャドウを付けたまま眠ると必ず同じ夢を見ることに気付きました。
それは一面の青い花畑を裸足で走っていく夢でした。
青い花はどうやらアイリスの花らしいのです。

aiai 



娘は周りから綺麗な目だと褒められていくうちに、
自分の目に自惚れていきました。

この目があれば幸せなど簡単に手にすることが出来ると。

これほど自分の容姿に自信を持てるなんて羨ましいですが、
いつも自分の目だけにとらわれて生きるのもなんだか淋しく感じます。

何も無いと思って自己否定してばかりよりは良いのかもしれませんが。

それにしても、アイシャドウの色をアイリスになぞらえたのは
本当に素敵な表現です。
神秘的な深い青は、上品に咲くアイリスにピッタリだと思います。


shasha 







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[ 2019/05/05 00:00 ] お話「や行」 | TB(-) | CM(0)
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Author:すきっぷ
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