童話作家 安房直子さんが遺した景色

安房直子さんの作品を紹介しています。
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不思議な砂場と海の猫『ふしぎなシャベル』


ふしぎなシャベル


☆あらすじ☆

ベンチで編み物をしていたおばあさんは公園の砂場で
置き忘れられているシャベルを見つけました。

銀色で柄には波の模様がついています。

「まあ、こんな綺麗なシャベルは見たことがないわ。
生きのいいお魚みたいじゃないの。」

シャベルを拾い上げて、砂場の砂をすくってみました。
すくった砂はさらさらととてもいい感じにシャベルからこぼれます。

おばあさんは嬉しくなって、せっせと穴を掘り始めました。
夢中でどんどん深く掘っていくと砂場の砂はだんだんしっとりと濡れてきて、
その濡れた砂には白い貝がらが混じっています。
そして、掘った穴からこぽこぽと水が湧いてきました。

湧き出た水は砂場に溢れ、気がつくとおばあさんは海にいたのです。

公園のベンチもぶらんこも、ポプラの木もありません。
見渡す限りの砂浜と青い海。
おばあさんは波打ち際の砂をせっせと掘っていたのです。



nenenekkkkkk



海でおばあさんは一匹のと出会います。
麦わら帽子をかぶったそのは、なんと魚をとる網を編んでいるのです。

それでおばあさんに「あんたも手伝ってくださいよ」なんて言うのです。

これ、おばあさんが編み物出来ること知っていて言ってるんでしょうね。
それとも、編むのを手伝わせるためにわざとおばあさんを連れてきたのかも。

読んでいて「私には無理だわ」って声に出してしまいました。
ちぐはぐな網目を見て呆れるが想像できます。


潮風が気持ちいい海、そして、とれたての生きのいい魚。

柄に波の模様がついた銀色のシャベルが連れて行ってくれた
不思議な海辺のの町。

おばあさんとのやりとりが面白くて、楽しく読み終えたお話でした。







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[ 2020/05/06 00:00 ] お話「は行」 | TB(-) | CM(0)

片目の黒猫と三日月村の秘密『三日月村の黒猫』


三日月村の黒猫


☆あらすじ☆

山本洋服店の息子、さちおが初めてその猫に会ったのはある夏の夕暮れ時、
西の空に細い三日月がかかり始めた時刻でした。

さちおの家はたくさんの借金を抱えて、今日倒産したのです。
家は表通りの大きな仕立て屋でした。
三代も続いた老舗を三代目のおさんが潰してしまったのです。

今朝、店を立て直すお金を工面するためにしばらく帰れないと言い残して
さんは青い顔で、ふらりと出掛けていきました。

それから、長いこと店の前にうずくまっていたさちおに
優しく声をかける者がいました。

「あなたを助けに来ましたよ。」

その声の主は、大きな黒猫でした。
片方だけ金色の目がきらりと光る、片目の黒猫が一匹、
さちおの横にのっそりと立っていたのです。

それは亡くなった方の三日月村に住むおばあさんから頼まれてやってきた
召使いの黒猫でした。

黒猫はつかつかと店の中に入っていきました.
そして、あとを追うさちおにこう言ったのです。

「さあ、しばらくの間、私と一緒に暮らしましょう。
山本洋服店を一緒にやっていきましょう。」


mimikkkkkkk




さちおと黒猫が出会った場面は不気味なはずなのに、
三日月がのぼる夜だとなんだか神秘的です。

ボタンを手に入れるために三日月村に行く道のりや
りすたちがボタンを作る場面は想像するのが楽しかったです。

その反面、三日月村の正体やおばあさんやおさんの想い、
「おさんでもあるし、おばあさんでもあるんだよ。
私の中にお前のおさんがいるんだよ。」
というおばあさんの言葉に考えさせられたりもしました。

場面が目まぐるしく変わる幻想的なお話なのですが、
司修さんの絵が加わると、アドベンチャー的な要素も感じられました。

読むたびに印象が変わる、何度も読み返してきた作品です。







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[ 2020/04/26 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)

おはじき三つと、あなたの心『星のおはじき』


星のおはじき


☆あらすじ☆

あの朝、あやちゃんが学校に持ってきたたくさんのおはじきを机の上に出すと、
女の子たちが集まってきて、おはじきに触ったり手のひらに乗せたりしていました。

私も、みんなの真似をしておはじきに触ろうとすると、
あやちゃんはいきなり、「さわらないで!」と言いました。
そして、顔をしかめて、とても嫌そうに、
「あなたが触ると、汚れるわ」と言いました。

私は心の中が、すうっと青くなるような気がしました。
指先が、凍ってゆくような気がしました。

その次の国語の時間は、先生の声が全然耳に入りませんでした。
給食も、美味しくありませんでした。

昼休みに図書室から教室へ戻ると誰もいませんでした。
私も校庭へ出ようと思ったとき、あやちゃんの机の上に置き忘れられた
赤い袋を見つけたのです。


jikijikiii




家の窓から大きなの木が見える川のほとりの古い家に
おばあちゃんと二人で暮らしている女の子
目が悪いおばあちゃんは、女の子が幼いとき身だしなみを
きちんとしてくれることが出来ませんでした。
服が汚れていたり、髪が乱れていたことで悪口を言われるようになりました。

今では自分の身の回りのことはきちんと出来るようになりましたが、
それでもまだ友達は汚い汚いと言っているのです。

悪口には負けない、いつも明るく生きていたいと思う女の子ですが、
それはずいぶん難しいことだとも思うのです。

文中に何度か、「難しい」という言葉が出てきます。
「出来ない」というよりも「難しい」ということで、女の子の辛さや葛藤が
強く現れているように感じました。

「幸せな人は他人に意地悪をしない」なんてことを聞いたことがありますが、
そのとおりだと思う反面、自分はどうだろうかと思って苦しくなるときがあります。

自分より劣っている人や貧しい人を見て安心する気持ちが少なからずあるからです。

なんと説明したらいいのか、うまく言葉にできないのですが、
私にとってとても心に突き刺さる作品です。

yyyyyyyyy







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[ 2020/04/24 00:00 ] お話「は行」 | TB(-) | CM(0)

おばあさんがミシンでカタカタ縫い上げます『カーテン屋さんのカーテン』


『おしゃべりなカーテン』より
『カーテン屋さんのカーテン』


☆あらすじ☆

「わたし、これから仕事を始めようと思うのよ。」

ある朝、おばあさんがいきなりそんなことを言ったので
家族はみんなびっくりしました。

「どんな仕事をするの?」
「また洋服屋さん?」
お母さんとはる子が同時に訪ねました。

おばあさんは、目が弱ってきたから洋服作りはもう無理と言いましたが、
古いミシンを使った良い仕事を思いついたと笑いました。

そして次の日、家の裏口にこんな看板を出しました。

”カーテンのお仕立ていたします。”



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3月になりました。

桜が咲きはじめたところもあって、もう春ですね。

そして、そろそろ衣替えの時期です。
厚手のコートや衣類はもうクリーニングに出してもいいか悩みどころです。

今日は暖かく柔らかい風が吹いていたので、少し窓を開けていたら、
いい感じにカーテンが揺れていました。
カーテンもそろそろ新しいのに替えたいなと思ったりもするのですが…。


世の中が色々ざわついていたとしても、季節は巡ってくるのですね。

3.11の震災のとき、当たり前の日常が当たり前じゃないこと、
今まで本当に恵まれていたんだなと実感したことが、
少しづつ、少しづつ、忘れはじめていたことに今更ながらに気づきました。


皆さま、どうぞご自愛下さい。





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[ 2020/03/15 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)

耳の遠くなったおばあさんと山の風からの贈り物『秋の音』


『秋の音』


☆あらすじ☆

「この頃、耳が悪くなりまして電話の話がよく分からなくなりました。
…電話の代わりに手紙をください。どうか御用はみんな手紙にしてください。」

耳が悪くなってきたおばあさんは電話がかかってくるとこんなふうに一息に言うと
最後にごめんなさいと言って電話を切りました。

そとに出て誰かに会っても、話がよく分からなくなってきてしまいました。

耳が悪くなって、おばあさんの周りが静かになってくると
そのかわりにいろんなものを良く見るようになりました。

ベランダに咲いているコスモスや空一面の夕焼け雲を、
いつまでも眺めるのが好きになりました。

ある日のこと、小さな小さな荷物が届きました。
茶色い小包の後ろには「山の風より」と書かれてあります。
包みを開けてみると、中からくるみが三つ転がり出てきたのです。



kukuku




今まで聞こえていたのに徐々に耳が遠くなっていくことで、
代わりに目に見えるものを大切に感じていったおばあさん。
それでも、聞こえないことで不安になることもあったでしょう。

山の風から届いたくるみは故郷を思い出させてくれるものでした。

でも、くるみが見せてくれたのは懐かしさだけではなく、
不思議で楽しい出来事でもありました。
そして、聞こえなくなっていた耳にも嬉しい奇跡が…。

安房さんのリズミカルで楽しくて優しい言葉に
気がついたら声を出して読んでいました。
わたしもこんなくるみ欲しいなと思ってしまうお話でした。






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[ 2019/11/02 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(0)

あんたたちは、やっぱりわたしの孫なんだよ。『遠い野ばらの村』


『遠い野ばらの村』


☆あらすじ

たったひとりで小さな村で雑貨屋を営んでいるおばあさん。
おばあさんは、店に買いに来る村の人や品物を卸しにくる問屋さんに
よく遠い村にいる息子の話をしました。

そこは綺麗な川が流れていて、たくさんの野ばらが咲いています。
息子の家族は奥さんと三人の子どもたち。
一番上の子は女の子です。

おばあさんは孫娘のためにゆかたの反物を買いました。
ゆかたを縫いながら、自分の若い頃にそっくりな孫娘の姿を
はっきりと目に浮かべるのです。

それは春のはじめの夕暮れ時でした。
そんな娘が本当にやってきたのです。

「おばあちゃん、こんにちは。」

店番をしながら、ゆかたを縫っていたおばあさんが顔をあげると
店の入口に、今まで自分が考えていたとおりの娘が立っていて、
にこにこ笑っていたのです。



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反物を買ってゆかたを縫っていたり、
小豆を煮て、もち米を炊いておはぎを作ったりする場面は
ずいぶん前のことを思い出して懐かしくなりました。

野ばらの石鹸や野ばらの塩漬けがのってる白いおまんじゅうとか、
見たことはないけれど「あったらいいな」と楽しい空想に思いを馳せました。

きっとおばあさんもおんなじだったのかもしれません。
「こうだったらいいな」と思いながら息子や孫たちのことを想像することが、
日々を楽しく前向きに生きていく糧になっていたのだと思うのです。






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[ 2019/09/16 00:00 ] お話「た行」 | TB(-) | CM(0)

おばあさんの針箱と不思議な縫い針『小さい金の針』


『小さい金の針』


☆あらすじ☆

おばあさんの針箱は古いバスケットです。
ずっと昔に、お嫁に来るときに持ってきたものです。

バスケットには、小さな赤い針刺しとハサミと糸巻き、
ボタンを入れた小箱が入っています。
針刺しには大きい針と小さい針がそれぞれ三本刺さっていて、
おばあさんは針仕事が終わると必ず針の数を数えました。

ある日のこと、針刺しに見たことのない針が一本刺さっていました。
お日さまの光だろうかと思うほどの金色の小さな針です。
針の数が増えるなんて、これまで一度もありませんでした。

ある晩のこと、真っ暗闇の部屋の隅っこがなんだか不思議な感じに明るいことに
気づきました。
それは、針箱のバスケットの小さな割れ目からこぼれている青い光でした。

「まあ、針箱の中に電気がついてる」

急に楽しくなったおばあさんは、そっと蓋を開けてみました。
すると、小さい青いランプが灯っていて、その光に照らされて
とても小さな白いねずみが針仕事をしていたのです。

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お裁縫をしているおばあさんとねずみの様子をみていると
母のことを思い出します。

母もよく縫い物をしていて、それを見ているのが好きでした。

布を裁断して、手縫いしたり、ミシンを掛けたりして
形作られていくのを見るのは本当に楽しかったです。

手際よく裁断した布をスイスイ縫っている様子は簡単そうに見えて、
私にも出来るんじゃないかと思っていたのですが、それがさっぱり。

やっぱりセンスなんでしょうか、手先の器用な人って憧れます。






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[ 2019/05/11 00:00 ] お話「た行」 | TB(-) | CM(0)

さっきは赤かぶをありがとうございました。『みどりのはしご』


『みどりのはしご』


☆あらすじ☆

小さな小さな庭の真ん中に、大きな大きなモチノキがある家に、
そのおばあさんは住んでいました。

近所の人は木を見ては、切っておしまいなさいと言うのですが、
おばあさんにはそんな可愛そうなことはできませんでした。
おばあさんはその木がとても好きなのです。

冬が終わると、おばあさんは木の下に小さな畑を作りました。
そして、赤かぶの種を十粒蒔きました。

すくすく育った赤かぶはやがて食べごろになりました。

そんなある朝、おばあさんがかぶの数を数えてビックリ!
たしかに十本あったはずなのに、九本しかありません。

「あれまあ、いったい誰が一本取ったんだろう。」

しばらくすると電話がかかってきて、その相手はこんなことを言いました。

「もしもし、おばあさん、さっきは赤かぶをありがとうございました。
これからサラダを作りますから、どうぞ食べに来てください。
モチノキのはしごをずうっと登ってきてください。」



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大切に育ててきたおかげで、すくすく育った赤かぶ。

食べごろになってサラダにしようと楽しみにしていたのに、
断りもなしに採っていくなんて。

もし私だったら
「差し上げたつもりはありませんけど?!
ありがとうの前にごめんなさいでしょ?」
なんて、チクリと嫌味の一つでも言いたくなると思います。
しかも、木に掛けられたハシゴを登ってきてくださいですって?!

外に出て木を見ると、確かに細いハシゴが掛かっています。
そして、おばあさんはハシゴをどんどん登って行くのです。

ただののんびり屋でお人好しな人だと思っていたけど、
結構大胆で好奇心旺盛でポジティブなのでした。

きっと、赤かぶを取られたことなどもうすっかり気にしてないのでしょうね。

挿絵も綺麗で、柔らかい色使いが青葉の爽やかな季節に合っていて、
清々しい緑とおばあさんの表情に優しい気持ちになりました。


akkk





「令和」の時代が始まりました。
今朝は昨日の雨が上がって、天気も良く清々しい一日の始まりでした。
これからどんな時代になるのか、どうぞ宜しくお願いいたします。


greee







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[ 2019/05/01 00:00 ] お話「ま行」 | TB(-) | CM(0)

ひとりぼっちのおばあさんと不思議なスカーフ『黄色いスカーフ』


『黄色いスカーフ』


☆あらすじ☆

春間近のある朝、外出時に大きなスカーフを持っていくと便利だという
新聞記事を読んだ、一人暮らしのおばあさん。

なるほど、私も試してみようかしらと、たんすの中から
目も覚めるような鮮やかな黄色い絹のスカーフを取り出してみました。

すると、心が明るくなってどこかへ出掛けたくなりました。

いそいそと、濃いオリーブ色の新しいワンピースに着替えて、家を出ました。

並木道を歩いていると風が吹いて髪が乱れたので、
さっそく黄色いスカーフで髪を包んでみました。

そして、通りがかりのクリーニング屋のガラスに写った自分を見て
たちまち真っ赤になってしまいました。

頭にカナリヤ百羽乗せてるみたいな派手な姿だと思ったのです。

大急ぎで黄色いスカーフをむしり取ると、クシャクシャに丸めて
バッグに放り込みました。

急ぎ足で歩きながら、おばあさんは恥ずかしくてたまりません。

すると、いきなりバッグからこんな声が聞こえてきました。

「ひろげて、ひろげて」
「こんなにクシャクシャにされたんじゃ、息もつけない」

それは、バッグに丸めて放り込んだ、黄色いスカーフの声でした。


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ひとりぼっちで暮らしている主人公のおばあさん。
春が近づく陽気に誘われてどこかに出掛けてみたくなりました。

こんなときに、電話でもかけて気軽に話のできる娘でもいたら…
という思いが湧き上がってきましたが、まだ元気だし、住む家もあるし、
お金にも困っていないのだから、そんな贅沢は言わないことにしましょうと、
思いを打ち消していきます。

そして、「私は幸せ者です」と、自分に言い聞かせるように
一人で出掛けて行くのです。

不幸じゃないけれど、なんだか胸にある淋しさに気づく瞬間。

けれど、これまでの生活は自分で選んできたことも事実。
それを分かって、何不自由なく暮らせている自分は幸せだと…。

少し切なさや淋しさを感じてしまうお話なのですが、
初春の雰囲気や暖かい季節の楽しみも感じられる作品です。

黄色いスカーフ、黄色いオレンジ、黄バラ、
黄色いカナリヤ、黄色いブリン

桜のピンク色も可愛いけれど、黄色も春に似合いますね。





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[ 2019/03/31 00:00 ] お話「か行」 | TB(-) | CM(0)
プロフィール

すきっぷ

Author:すきっぷ
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに



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