童話作家 安房直子さんが遺した景色

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写真ができたら、届けてくださいね『オリオン写真館』

オリオン写真館

☆あらすじ☆

村の写真館で働いているおのオリオン。
もう三年も修業しているのに、まだ一度も写真機に触らせてもらえないのです。

オリオンは一大決心をしました。
「そうだ、独立しよう。」

驚いている写真館の主人にカメラを一台分けてもらい、オリオンは店を出たのでした。

村は桜の花ざかり、お花見や入学式が重なったせいで、道行く人たちに「写真屋さん、写真屋さん」と呼び止められて商売は大繁盛です。

そして夕暮れ時、「さあ、これから現像しよう」とカメラの蓋を開けたオリオンは叫び声をあげました。

肝心のフィルムが入っていなかったのです。
写真機の中は空っぽでした。

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★★★★★★★★★★


フィルムを現像していた時代のカメラあるある。
デジタルカメラしか知らない世代には考えられない出来事ですね。

やっとカメラを手に出来たオリオン。
ずっしりと重たい感触に喜びを感じ、四角いレンズを通して覗き込む不思議な楽しさ。
そして、初めて自分の報酬として手にする金貨。

そんな感動を一気に打ち砕く大失態をしてしまって頭をかかえて考えて出した結論。

オリオンのこの切り替え方、今までの私なら嫌な気分になっていたでしょう。
こんな展開、絶対あとで悪い結末になるからと思っていたところです。

オリオンの行動は褒められたことではありませんが、今まで写真館の主人に都合の良いように働かされていたことを思うと、導かれるようにたどり着いた場所から村人たちに送った写真にささやかではありますが、救われる思いがしました。





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[ 2022/08/11 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(-)

海の町のお祭りと桜貝『海からの贈りもの』

海からの贈りもの

☆あらすじ☆

夏が終わって、海水浴のお客が帰ってしまったあとの海の町のお祭り。

病気のお母さんが「好きなもの買っておいで」と渡してくれた五十円玉二つをポケットに入れて、一人で夜店に来たかな子。

これで自分のものを五十円分、お母さんのお土産を五十円分買いたいなと思っていました。

いつもは「見るだけのお祭り」でしたが、久々にもらったお小遣いが嬉しかったのです。
でも、五十円で買える品物なんて、めったにありません。


すると、「一袋、五十円よ」という声が聞こえました。

りんご箱を一つ置いただけの小さな店に、青いネッカチーフを被ったおばあさんが座っていて、箱の上には綺麗な桜貝がたくさん並んでいたのです。


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★★★★★★★★★★



たくさんの人たちが賑わうお祭りの夜店。

もらったお小遣い全部を使ってしまえば買えるものはあったはずなのに、お母さんへのお土産の分を使わないように、半分のお金で買えるものを探していたかな子の気持ちが優しくて切なくなりました。

自分の分のお金で買った、たった一握りの桜貝に導かれ出会ったおばあさんたちからの、かな子の気持ちに呼応するような贈り物。

そのラストに暖かい気持ちになりながら、私にも贈り物を頂いたとき、気に掛けてもらえた嬉しさがあったことを思い出しました。





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[ 2022/03/06 00:00 ] お話「あ行」 | TB(-) | CM(-)

胸の中のかまどが真っ赤に燃えている女の子のお話『わるくちのすきな女の子』

わるくちのすきな女の子

☆あらすじ☆

人の悪口を言うのも、人にいじわるをするのも好きな女の子がいました。

この女の子は咲きたての花のような綺麗な顔をして、頭も良くて、遊びも上手でした。
ゴム飛びも一番高く飛べる女の子に友達は憧れて集まってくるのです。
そして、女の子はその中でいつも一番威張っていました。

ゴムとびが下手な友達を仲間外れにしようと言った時も、ほかの友達は同調していきました。

ある日のこと、灰色のボロボロの服を着たみすぼらしいおばあさんから、虹のように美しいゴムひもを借りてゴムとびをしてみると、見えるはずのない遠くの海が見えたのでした。

「見えたわ。」

思わず手を叩こうとすると、女の子の両手は灰色のつばさでした。

女の子は小さな灰色の鳥になって、今、公園の上に浮かんでいるのです。

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★★★★★★★★★★



灰色の鳥の姿になった女の子は魔法をかけたおばあさんを探しに飛び出します。
町中を探し回り、ずっと遠くの山々を越えていきます。

その先々で出会った花やきつねにも悪口を浴びせかける女の子。
そして、女の子は「わるくち鳥」と木や草花、森の動物たちから噂されるようになります。

女の子自身も分かっていました。
胸の中に真っ黒いかまどがあって、ゴーゴーと音をたてて真っ赤に燃えあがると、悪口があとからあとから沸いてきて、誰かに浴びせかけると何とも言えない良い気持ちになることを。

自分でもどうにも出来ないと思っていた激しい意地悪な炎は、人間に戻りたいという強い気持ちで出会ったさまざまな存在との交流のなかで変化していきます。
今まで悪い方向に動いていた強固な気持ちが、根気強くて勇気のある子だと言われた瞬間は、読んでいて何故か私も肩のチカラが抜けていくような気がしました。


最後に、物語の中で特に印象的で、鼻の奥がツンと苦しくなった台詞を記しておきます。

「あの二人は、きっと幸せに生きてゆくよ。底抜けのお人好しの上には、幸運の星がついているんだよ。」


happyyyy

※星と言っているのに、何故かこんな青空が頭に浮かんだので。






[ 2022/01/23 00:00 ] お話「わ行」 | TB(-) | CM(-)
プロフィール

青と緑璃

Author:青と緑璃
安房直子さん作品に恋した「すきっぷ」改め「青と緑璃」です。


*安房直子さんご本人や関係各所とは一切関係ありません。


はじめに



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